ら民町の化け物事情〜改〜

25話「死を司る小さな神」 ページ25

一方、青鬼の館にて＿＿＿。



「……ぐっちさんと会ってる。安心はしていいかも」

「おっけー」


五階に向かっている途中の階段で緑色から得られる情報を耳にする。

A一人のおつかいだとは言ったものの、やっぱり怪物成り立てのAを一人で町に降ろすのは正直怖いところがあった。

俺らの町だし、今回向かわせてる区域はぐちつぼの管理下だからそこまで怖いことは起こらないとは思ってるけど……


「都市伝説の奴らに声かけといて正解だったな」

「連絡着いたのぐっちさんだけだけどね」

「なんで他の奴らは連絡つかねぇんだよ。全員冬眠中か何かか？」


そう言うと緑色は眉間に皺を寄せながら使い魔から得られる情報とにらめっこをした。

ら民町の都市伝説は全部で六つ。その内の一つであるぐちつぼにしか連絡が取れないというのは由々しき事態なのだが、あいつらの性格を考えると連絡がつかないのも必然のような気もしてくる。


「「神隠し」は冬眠の期間に入ってるから連絡がつかないのは分かるけど……他は冬眠しないから起きてるはず…」

「ま、どうせいつもの気まぐれだろ。少なくとも向こうでも定例会くらいはやってるはずだし、そのうちぐちつぼから連絡が来るだろ」

「……そうだといいけど」


歯切れの悪い緑色を横目に五階の階段を上る。

青一色に染まっていた五階だったが、緑色を中心に俺らで改良した結果中々に良い空間が出来上がったので特訓スペースとして活用することにした。

もう俺の中にある青鬼の食欲反応も無いし、“あれ”が出てくるようなことも無いしで安心して五階に滞在することが出来る。

そう思いながら欠伸をして五階に入ると違和感を覚える。


「…しにがみくん？」


準備のため早めに来ていた俺たちより早く五階の部屋に居る小さな後ろ姿。

きょーさんと似たような服に身を包み、自分の身長より遥かに大きな鎌を両手で持っているその姿は俺に声をかけられるとビクッ、と肩を大きく震わした。


「ら、らっだぁさん？！それにみどりくんも……」

「早いね。集合の時間はまだまだだけど」


おかしい。

俺が近づく度にどんどん後退していくしにがみくんもそうだが、部屋全体に違和感を感じる。

チラッと緑色と目を合わせると、緑色もその異変に気づいているのか一つ静かに頷いていた。


「一人で何してるの、しにがみくん」


頼むから、疑わせないでくれ。

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