此処で接吻して頂戴【我妻善逸】

すきよ ページ3

粘土。


私は粘土。


私はいつの日だったか人形になった。

心音も血の流れも脈打つこの体の音は誰にも聞かれない、聞こえない。


私は誰かに音を消された。


幸いにも声は届くけれどこのまま進んでいけば無音の人形になりかねないの。



そんな私を救ってくれたのが我妻善逸。


貴方だった。


貴方はアナーキーな状態だった私の気持ちを汲み取って理解してくれた。


それも最初だけなのだけれど、進行しちゃってもう聞き取ってさえくれないだろうけれど。



貴方の嬉しそうな、玩具の首を締めたみたいな心底愛しい高音の。



『可愛い』



なんて言葉が嬉しかった。



救われていようと、恋愛経験無しだからだろうと関係なく酷く酷く嬉しくて、舞い上がりそうで。



毎晩あなたを夢に見て、毎朝貴方を想って起床する。


声が出るか心配で。


貴方に主張できるか心配で。



どれだけ私の人生を捧げられるか分からないけれど、でも、ずっとずっと思っているの。


できるだけ嫌われないよう大人しくしているの。


でも個性なんて無くなるからたまに反抗するわ。



貴方の言葉は一言一句聞き逃さないし、貴方の僅かな動作にだって振り回されてあげる。



だから何処にも行かないで頂戴。


この感情が愛じゃなくてもいいわ、いいわよ。


恋じゃなくても。



依存だとか執着だろうと何でもいい、置いていかないで。

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