検索窓
今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:20,277 hit

ひとごろしの記憶 ページ8

「伊黒小芭内様、私の懺悔を聞いてください、ひとごろしの記憶を。



私の父は、ある土地の偉い御方だったそうで、私達もそれなりに良い暮らしをしていました。

私の父は、笑顔の絶えぬお方でしたが、それを私に向けることは一切ありませんでした。

愛の矛先はどこか遠くのものでした。


わずか九つの頃、私はまだ姥の愛に必死にしがみついていました。


嫌われたくないという、それに囚われ、九つにしてすでに囚人でした。



そして、姥が死にました。



私を愛してくれた人はもういません。



やがて父も私の存在をなかったことにし始め、ある美しい淫売婦を連れてくるようになりました。



亡き母に似てもいない女でした。

けれど、父や私と、違う、母に似た亜麻色の髪で、私は亜麻色を謙遜し、妬みました。



私もその髪だったら。


父は女に金をつぎ込みました、女はけらけらと笑って、それ相応の愛を育みました。

私は、隅っこの静かな嘘つきでした。


そして十になったとき、私のひとごろしの記憶ができました。


女は父の愚痴を私に聞かせてきたのです。


嫌いとか、父は抱くのが下手だから、など。


愛を注がれない私にとってそれは辛く、険しく、怒りのもとでした。


貴女は愛されているじゃない、どれだけ愛されてるか知らないんでしょ。

私がどれだけ愛されていないか、見向きもされてしないか、考える事ができないんでしょう。



そしてその愛すら捨てるのだ、と察したとき。


ほら、見てください、このナイフで首を刺しました、特注の羽模様の綺麗なナイフ。

首が、急所なのは知っています。


やがて悲鳴に気付いた父もやってきましたが、私に見向きせず、彼女を抱いておいおい泣き出しました。


私がやったことに気付いていたはずなのに、殴っても貶しても良かったのに。


獣のように喚いて、涙が出てその地獄にとどめを刺したのです。


私は逃げて逃げました。


着いた先が寺で、ある男女の夫婦を利用しました。


嘘をつきました。



だからこうしてお話しています。



貴方を騙したことを後悔しました、優しくて情に厚い貴方、嘘が嫌いな貴方。


お聞きのとおり、私は天使ではないのです。



これが私のひとごろしの記憶です。」

天使、天遣、あまつか→←懺悔室



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
21人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 伊黒小芭内
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いぬお(プロフ) - 露亞さん» あ"り"か"と"ぉ"こ"さ"い"ま"す"伊黒さんほんとしんどいです (2019年12月30日 13時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - 最高。伊黒さん尊い… (2019年12月30日 12時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いぬお | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年12月27日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。