あさやけだんし Y.Takaki

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…







……







「ゆうや、おはよ。」






ぐいーって背伸びをしながら裸足で歩いて行ったキッチン。






「ねーあつくなるかなぁ、今日。




昨日あれから何時に寝たのー？」







冷蔵庫を開けて、ペットボトルの野菜ジュースを片手に取りながら彼に電話をかける。






おはよーとか、何時だよとか。






そんな言葉が返ってくるのはほぼ奇跡に近くて、





唯一聞こえるのは咳払いと、シーツが擦れる音。








「今ね、お弁当いるかなーって思って、




たまごやきとウィンナーと」






あとはー…ほうれん草の胡麻和えと、






雄也「…Aー…」







おかかと鮭のおにぎりと、




ちょっと時間かかるけど唐揚げと…






雄也「…おーい、Aちゃーん」






「ん？」






雄也「早過ぎんだろ…




…朝からきゃんきゃんうるせーよ」






「だって朝一で起こせって言ったの誰ですか。」







雄也「はいはい…俺ですよー…




あー…ねみーなぁくっそ」






最上級に機嫌悪く呟いて、




やがて聞こえてきた軋む音が彼が起き上がったサイン。







雄也「お前何時に起きたの。」






プシュって、炭酸のペットボトルを開ける音。






「何時だろ。5時頃？」






雄也「5時？はえーよ…





Aたかが海でそんな楽しみー？」







電話越しに嬉しそうに笑う顔も、声で簡単にわかっちゃうから。





「…うん。」






昨日の雄也のせいだよって、



言えるわけない言葉。




オレンジ色の冷たいジュースで押し流した。









雄也「別にはしゃぐのはいーけどさ、調子乗ってケガすんなよ」






「はいはい。」






雄也「はいは一回だっつってんだろ。」






「もう。…自分だって、」






…あ、






「ねーゆうや、なに着てこう。」






雄也「あぁ？着るもん？




んなの海にぽーんって投げてやっから制服着てくればいーんじゃね」






「やだよ。海開きもしてるもんね、水着かなー…」






そんなことを考えながらコンロの鮭をひっくり返して、





雄也「持ってんの？」





「そりゃ持ってるでしょ。」





なに持ってんのって。






雄也「へー。まあ好きにすれば。





お前に変な気起こさねーから安心しろ。」







…んーじゃあ俺先出てっから弁当作ったら来い。








私の返事を待って彼のほうから切られた電話。






場所も時間も決めない、いつも通り。







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