あさやけだんし Y.Takaki

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”ひと夏で夏らしいことぜんぶ。”






「明日なんじ？海行くの。」





どうして私たちは、こんな口約束しちゃったんだろう。






雄也「んー…




休みだし朝一にしたかったけど今こんなことやってたら確実起きれねーじゃん。」






ずーっと空を見上げている私に、まっすぐと海を見据えながら彼が話す。








雄也の香水の匂い。





男の人の香水は、雄也のだけが好きだと思えるの。






「そう？起きれるよ、大丈夫。」






雄也「いやちがくて俺が。」





「もー…いいよ電話するね。起きた時間に。」






早起きが得意な私と、




あんまり寝起きがいいほうではない彼。






なのに雄也は待ち合わせとか、具体的な時間を決めるのをいつも嫌うから。





雄也「電話ぁ？」





「うん。」





雄也「いやいいけどさ、



でもあとで雄也機嫌わるいからもう電話かけない！って言うじゃんお前いつも。」





「…言うけど。




でも起きるの待ってたらお昼になっちゃうもん。」





雄也「じゃー…」








簡単な口約束も、






「じゃあ、なに？」





幼さにしがみついているこの距離感も、






…せめて今だけでもすがりついていたいって、







雄也「A泊まってく？」






「え、」







語尾を上げる雄也のいつもの話し方。






振り向いた彼が一瞬真剣な顔をした気がして、




そんな言葉を彼の口から聞くなんて思ってみたこともなかった。





雄也「…うそ。ったくマジな顔すんなよ、A」






「してないよ、」






…どうしたの、




やっぱり、変だよ雄也。






雄也「んなことしたらかーちゃんに合わせる顔ねーよ俺。」







乱暴に私の髪をぐしゃぐしゃにして、肩を優しく叩いた彼。





先に彼の足音が聞こえ始めた。






雄也「ほら、帰るぞ。」






「ん、帰ろー。」







どうか明日も、その先も、




ずっといつもの私たちでありますように。









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