41 ページ45
.
「よぉ、やっと起きたな。」
スッと開いた襖から、じいちゃんが室内へ一歩踏み込んだ。それを見るや布団を跳ねのけて、その胸に飛び込んだ。
「おぉっと、おいおい、会う度抱きつかねぇでも、俺はここに居るって言ってんだろう？」
はは、と嬉しそうに笑いながらじいちゃんがそう言うのに、ほっとした。
「..................私、寝てた？」
「正確にゃまだ寝てる。」
「やっぱり........。ここは私の意識の中だもんね。
あれから倒れて.....どれくらい寝ちゃってるんだろ。」
「丸2日ってとこだろ。
今は勝己が様子見てくれてるが、もうちょい日が経てば本土に送り帰されんぞ。」
くつくつと笑うじいちゃんに、それは起きないと、と苦笑した。
じいちゃんは私が無意識下で知覚したことをこうして整理してくれている。
ここのじいちゃんはじいちゃんであって、半分は私の一部。私はここで自分の意識の整理をしているのだ。
けれどもう半分は。
「...............私、じいちゃんと同化していたの....？」
「俺の、記憶とな。」
「最初は自分の意識があったのに、途中からじいちゃんになってしまっていた....気付かなかった......。
呑まれて、た...........？」
「まぁそうだろうな。」
腕組みをしながらじいちゃんはゆったりと言った。
「悪意とかは、感じなかったのに.......。」
「悪意じゃなかったんだろ。」
「悪意じゃない....意思.............。
この島の、何なんだろう.........。」
「さぁなぁ。そこまでは判断材料が少なすぎるわな。
ただ、悪意じゃねぇにしろ、注意が必要だ。」
それに....、と呟いてふいっと、じいちゃんは天井を振り仰いだ。
「そろそろ、潮時だ。悠長に付き合ってやる義理も余裕も無ぇ。
近付いてる。目覚めろA。
あの子らが、泣く前に。」
「そうだね。」
そう呟いて、ひとつ、淡く光り始めた襖に私は手を掛けた。
「........だからって、ね、記憶の中で勝己出さなくても。」
くつくつと喉で笑うじいちゃんにじとりと視線を送る。
「そりゃぁな、勝己出しゃ起きるだろ、お前は。」
「もう。
ねぇ、じいちゃん。」
「うん？」
「白夜さん、綺麗な人だったね。」
「おう、だろうが。」
「ふふ、じゃ。
行ってきます。」
「おう、行ってこい。」
お前はもう出来る。
眩しい光の向こうに、じいちゃんの声がこだました。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
泉(プロフ) - Lavenさん» サクヤは本名ではなくヒーロー名なので、ヒーロー活動中はヒーロー名表記を心掛けております。シーン表現として加味していただければと思います。 (2023年3月19日 23時) (
レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
Laven(プロフ) - 名前がサクヤって表示されたり、自分が入力した名前になったり分かりずらいです…｡ (2023年3月19日 22時) (レス) id: 0953f1e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - 墨香さん» すみちゃぁぁぁぁいつもありがと...！ほんと、いつも君の言葉は私を掬い上げてくれる。筆をとったこと、後悔しないようにしてくれてありがとう。一緒に楽しめるように、がんばる。 (2022年6月20日 21時) (レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - じゃんみくさん» ありがとうございます！！サクヤにものすごいクソデカ感情を抱いて下さってるのめちゃくちゃ嬉しいです*楽しんでもらえるように、したいなぁ。 (2022年6月20日 21時) (レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - えぬさん» ありがとうございます！もしやエスプレッソ100票の方！？違ったらごめんなさい。Twitterやってます！izumi_morningですよろしくお願いします！せっっ先生！？なんて恐れ多いですが嬉しすぎます！ぜひお声かけて下さい* (2022年6月20日 21時) (レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：泉
| 作成日時：2022年6月19日 17時
