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「これ持ってけ。」
家を出る息子の、もう大きなその手のひらに、ぐっと押し付けた。
包みの布をほどくと、薄明がハッとこちらを見つめた。
「絶対、守ってくれっからよ。な？
最強のお守りだ。」
そう言ってニッと笑ってやると、薄明も笑った。その目に涙を浮かべて。
「ったぁく、お前の賢さは母さん似だけどな、
そのべそっかきは、
俺似だなぁ。」
もう久しく触ることのなかった、その位置の高い頭をわしゃわしゃっと撫でつけた。
もう、何度目の春だったろうか。
「おー、白夜、おはようさん。
今日はまた、えれぇ上機嫌だな。」
庭の桜の木に水をやって、そのままぼうっと木を見つめた。
薄明と相談して、まだ若木だったこの桜の木の根元に白夜の遺髪を埋めて十数年、か。
不思議なもんで、それ以来この木は毎年豊かに花をつける。
まるで白夜が笑うようにさわさわと枝を揺らすのが、愛おしかった。
薄明が家を出て数年。一緒になりたい人が居ると打ち明けられて、陽菜さんと挨拶に来た日もこんなてんこ盛りの満開だったな、と思い出して笑った。
少し前には、孫が生まれたという知らせをもらった。
その言葉に心から喜んだが、そんなまっさらでよ、綺麗なもんに、俺が触れちゃいけねぇ気がして会うのは断ってきた。
さわさわと枝がその身を揺する度、大量の花びらが空を埋める。
「なぁ、白夜。
俺は、やりきったよなぁ。なぁ白夜........。
そろそろお前んとこ行ったって、
怒らねぇでくれるだろ.......？」
ざざざ、と音を立てて、舞い上がった大量の花びらが一様に風に流され滑っていく。
それを見るともなく、何となく視線で追った、その時だった。
門扉の柱の影に、小さな影が見えた気がした。
猫よりも明らかに大きく、近所の人間と言うには明らかに小さい。
不審に思って目を凝らすと、それは舞い上がる花びらを見つめているようだった。
その内にひょっ、とその影は門扉から躍り出た。
「おじー、ちゃん？」
陽菜さんによく似た、栗色の髪を両の耳元で束ね、
そして酷く、白夜に似た薄い色の瞳をした、
少女がきょとりとこちらを見つめていた。
俺の体は雷に打たれたようにして微動だに出来なかった。
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泉(プロフ) - Lavenさん» サクヤは本名ではなくヒーロー名なので、ヒーロー活動中はヒーロー名表記を心掛けております。シーン表現として加味していただければと思います。 (2023年3月19日 23時) (
レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
Laven(プロフ) - 名前がサクヤって表示されたり、自分が入力した名前になったり分かりずらいです…｡ (2023年3月19日 22時) (レス) id: 0953f1e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - 墨香さん» すみちゃぁぁぁぁいつもありがと...！ほんと、いつも君の言葉は私を掬い上げてくれる。筆をとったこと、後悔しないようにしてくれてありがとう。一緒に楽しめるように、がんばる。 (2022年6月20日 21時) (レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - じゃんみくさん» ありがとうございます！！サクヤにものすごいクソデカ感情を抱いて下さってるのめちゃくちゃ嬉しいです*楽しんでもらえるように、したいなぁ。 (2022年6月20日 21時) (レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
泉(プロフ) - えぬさん» ありがとうございます！もしやエスプレッソ100票の方！？違ったらごめんなさい。Twitterやってます！izumi_morningですよろしくお願いします！せっっ先生！？なんて恐れ多いですが嬉しすぎます！ぜひお声かけて下さい* (2022年6月20日 21時) (レス) id: 250c48e64a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉
| 作成日時：2022年6月19日 17時
