YELLOW FLOWER

． ページ20

照『……………』


「…ごめん、嫌だった？」


照『……いや、嬉しい』




岩本くんも嬉しいと言ってくれてちょっとドキッとした




「……………」


照『…周りからそう見られてたんだな』


「うん…そうみたい」




ちょっと気まずいような空気になってしまった


しばらくして、岩本くんが行こっかと言うので


返事をしてお会計をしようとすると…




照『あ、会計もうした』


「え」




岩本くんが当たり前というようにそう言った


いつの間に？そう思って驚いていると、


あの店員さんが微笑ましそうにこっちを見ていた




照『行こ』


「うっうん」




驚きを隠せないまま、お店を後にした






しばらく歩いていると、ふと思った


…お金、払わなきゃ




「岩本くん」


照『ん？どした？』


「その…さっきのカフェの代金なんだけど…」


照『あぁ、要らない』


「へ？」




その言葉にまた驚く


彼は当たり前みたいに言ってるけど…




照『女の子に財布は出させねーよ』




ちょっと恥ずかしそうに笑う岩本くん




「……ありがとう？」


照『なんで疑問なの笑』




何て言うのが正解なのか分からずそう言われてしまった


正面を向いたままの岩本くんの横顔はとても綺麗だった






またしばらく歩いていると、岩本くんが立ち止まった




「？……どうしたの？」




そういうと、ちょっと前に進んで私の方を向き…


頭を撫でられた


その時の彼の表情はちょっと緊張してる




照『今日だけ…今日だけ、俺の我儘聞いてくんない？』


「我儘…？」




少し首を傾げる


…岩本くんの我儘ってどういうことだろ


と、頭にあった手は私の右手を掴んだ




照『手、繋ぐの』


「……………」




ちょっとびっくり


岩本くんからそんなこと言われるなんて…考えてもなかった




照『…嫌…だった？』




不安そうに私の顔を覗き込み、聞かれる




「あっ、ううん！………嫌じゃ…ない、です」




素直な気持ちを口に出すのってこんなに恥ずかしいのか


と思って少し俯く


良かったっと言って満面の笑みを浮かべる岩本くん


初めて見た彼の笑顔は、どんな人よりも輝いて見えて、


怖い人という印象を欠片も感じさせなかった




照『じゃあ、行こっか』


「うん…」




なんだか変に意識してしまって、


彼の顔を見ることが出来なかった

．→←．

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す