〃 ページ34
「そう」
やはり駄目だったか。
目を伏せて深呼吸をした後、柵に向かって歩き出す。
「……？どこへ行く」
「ちょっと天国まで」
柵に足をかけながら、悪魔の問いに答える。
ここの柵、結構高いな……跨ぎにくい。
というか、契約しないのなら、もう帰ってくれていいのに。
そう思いつつも、どうせもうすぐ私には関係なくなるのだから、
特に何も言わないでおいた。
しかし、カロンはそうは思わなかったようで。
「は？」
素っ頓狂な声を上げた。
「いやいやいや、おかしいだろう。断られたぐらいで死ぬか普通」
「……」
普通、か。
「衣食住の整った生活を悪魔に求める私が普通だと思うの」
「思わないな」
「でしょ？」
「ああ」
納得したようなので、今度こそ飛び降りようと
フェンスにかけた手を放そうとする。
そこでまたしても呼び止められる。
「まて。……ふむ、気が変わった」
「とか言って私が死んだらかわいそうとか思ってるんでしょ」
この天邪鬼が。なんて言葉は飲み込んで二ヤついた顔をさらす。
それに対してカロンは、私とは別の、愉快そうな声をあげて笑った。
「クク……いや、本当に気が変わったのだ」
首をかしげる私に一切の説明をせず、カロンは告げた。
「いいだろう、その覚悟と死を恐れぬ精神、気に入った。
――だが、本当にいいのだな？」
「代償のこと？ならいいわよ」
軽く、しかし確かに頷いた私と確認し、カロンは指を鳴らした。
途端に、景色が一瞬で変わった。
夜の暗い空の下にある建物の屋上から、
夢に見たような、そこそこ広い一軒家の前に私は立っていたのだ。
「これは、すごいわね……」
簡単の声を上げる私に、カロンは鼻を鳴らした。
馬鹿にされたらしいので癪に障ったが、今度は怒りを抑える。
「お前といる”誰か”とは、人でなくてもいいのだろう？」
「まぁ、話せて行動ができて一緒にいてくれるものだから」
「なら、私が請け負おう」
告げられた言葉が一瞬分からず、目を瞬かせた。
そして、ゆっくりとかみ砕いた私は、また口角を上げた。
つまり、やっぱりなんだかんだ言って私のことが心配なのね。
「そして代償は、私がお前と決別した瞬間から死ぬまでの寿命だ」
つまり、死ぬまで一緒にいてくれるってことね。
なーんだ。悪魔と名乗っておきながら、意外と優しいじゃないの。
と、思った私がばかだった。
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瑠衣華(プロフ) - 幽輝＆華さん» ありがとうございます。誤字は普通に私のミスです、すみません。面白いといっていただけて光栄です。これからも作品作り頑張ります！ (2019年1月4日 21時) (
レス) id: 9adbf105ee (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣華(プロフ) - クロノスタシスさん» コメント見落としていました、すみません。共感してもらえて嬉しいです！「実は生きてたりせんかなぁ……？」ってずっと思ってます (2019年1月4日 21時) (レス) id: 9adbf105ee (このIDを非表示/違反報告)
幽輝＆華(プロフ) - 被虐のノエルのオスカーさんのやつ、＜ジーノ管理官＞が＜ジーの管理官＞になってますよ？わざとだったら、すみません！！あと、ものすっごく面白かったです！これからも、頑張ってください！！ (2019年1月1日 1時) (レス) id: 0b112b624e (このIDを非表示/違反報告)
クロノスタシス(プロフ) - 吐きそうな程にアリスさん好きなんは分かる。キミガシネの2章前編ラストは分岐で、レコが死ぬかアリスが死ぬかだったかと……それ見てたワイ「どっちも死ぬなよォォォォ！」でした。ハイ (2018年9月16日 23時) (レス) id: 7e91a010ff (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣華(プロフ) - 雪さん» 共感してもらえてありがたいです。やっぱりショックですよね……。ホラゲキャラは本当に、みんな天使だしかっこいいし可愛いし、人生の癒しって感じです。 (2018年9月16日 21時) (レス) id: 9adbf105ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠衣華 | 作成日時：2018年4月14日 21時
