レ ン タ ル 彼 氏 ≪ Daiki.S ≫

レンタル18. ページ18

それからしばらくして入ってきた人。

その人は私を発見するなり"よぉ"と言ってこちらに手を振っていた。









「A、お待たせ」


『遅いねん、焼肉食べたいって言ったんそっちやろ？』



私と桃花の飲み会に乱入してきたその人は強引に私の隣に座り込んで。

目の前の桃花に"初めまして"とキラキラの笑顔で挨拶をしていた。




すると突然桃花に腕を引っ張られて。

なぜか少し離れた場所に連れてこられた。









「ちょっと！あのイケメン誰なん！！」


『ほんまにごめんな、焼肉食べたいってうるさくて』



「それは全然ええねんけど！！あれAの新しい彼氏なん！！」


『なわけないやん、お兄ちゃんやで？』



そう言った私に桃花はあからさまにホッとしたような表情を見せて。

"それなら早く言ってや！"と言った桃花はスキップをしながらお兄ちゃんの元へ行ってしまった。







そう、今店内に入ってきたのは私の兄だ。

藤井流星、26歳。



私の2つ年上の兄でいつも適当で大雑把。

だらしないところが普段の生活にも支障をきたしていて恋愛も全く上手くいかない。



第一印象はいつもいい顔をしているからモテるんやけど。

付き合って中身を知ってしまったら女の子はみんな離れていってしまうらしい。





……なんか少しだけ桃花と似てる気がする。









「初めまして、Aの友達の桃花ですぅ〜！」


「桃花ちゃんって言うんや、可愛い名前やね」



「えぇ！そんなことないですよ！！」


「ううん、めっちゃ可愛い」



うっわ、二人ともめっちゃ猫被ってるわ。

お互いの猫が外れるのも時間の問題やな。



……桃花この間恋愛はしばらくお休みするって言ってたのにもう気が変わってるやん。

いいなぁ、恋愛に積極的な人は。






私なんかいつまでもレンタル彼氏から離れられてないし。

おまけに元カレのこともちゃんと踏ん切りをつけられていない。



仕事は楽しいしコツコツやっていけるのに恋愛になるとどうしてもだめだ。









『淳太くんに返信しないと、レンタル彼氏もちゃんとしないと……』



淳太くんにまだ返信していないメッセージをぼーっと見つめる。

重岡さんにレンタルすると言ってしまったのになかなかレンタルできないことにも少し焦りを感じていた。









『はぁ、もうどうしたらええんや』









こんなことで頭を抱え込んでしまう私は相当恋愛に向いていないんだな…と思った。

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