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『はあっ、はあっ………』
薄暗い森の中を駆けていく1人の少女。滅亡したフレバンス王国の生き残りである。
少女が故郷を離れてから、どれくらいの月日が経ったのだろう。あの地獄のような惨劇は少女の心に深い爪痕を残している。
「白い町」から逃げ出した少女は今、何かに追われるように森の中を駆け回っていた。
『はあっ、はあっ………っ!!』
地表に出た木の根に足をとられ、少女は勢いよく地面に倒れ込む。
倒れた際に手足を数ヶ所擦りむいたが、少女の心の痛みに比べればこの程度の傷などなんてことない。
『っ………』
肘をつき、立ち上がろうとする少女の目からふと涙が溢れ、乾いた地面に広がっていく。少女は起き上がろうとするのを止め、その様子を黙って眺めていた。
大切な人々や故郷を突如奪われた少女の心はひどく荒んでおり、常に暗い感情が胸に巣くっていた。
それでもなお、涙が枯れ果てていなかったことに少女は自嘲の笑みを浮かべる。
少女はゆっくりと深呼吸をし、速くなった鼓動を落ち着かせた。風に揺れる木々のざわめきと遠くに聞こえる波の音以外、何も聞こえない。
木の幹に背中を預けるようにして座り、少女は黙って空を見上げる。鬱蒼と生い茂る木々の奥には綺麗な夜空が広がっていた。
人は、死んだら星になるという。
少女は幼い頃に聞いた話を思いだし、無意識に夜空を見渡した。大切な人々の面影を少しでも見つけられるように、と。
そこまでしたところで、少女はようやく自身の行動に気づいた。夢見がちな愚かな行動に呆れ、夜空から視線をそらす。
無意識とはいえ、未だ希望を捨てきれないような甘さの残る自分が、どうしようもなく憎かった。
『………』
膝をギュッとかかえた少女は顔を埋め、静かに目を閉じた。
不要な感情を消し去るように、少女は細く長い息を吐く。少女を駆り立てる気持ちがなんなのかを無理やり思い出させているようだった。
『………』
闇もいっそう深さを増し、静寂が辺りを包み込む。まるで森と同化したような不思議な感覚に陥った、そのときだった。
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少女のではない、誰かの声が聞こえたのは。
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うさこ - 続き楽しみです (11月2日 4時) (レス) @page29 id: acedfd8679 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 初めまして、この小説はトラファルガーローオチですか?出来れば、トラファルガーローオチでお願いします🥺続き待ってます。頑張って下さいね。 (8月20日 2時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
カリリン - もう、書いていただけないのでしょうかぁ… (2023年5月1日 19時) (レス) @page29 id: d3adcc0fb3 (このIDを非表示/違反報告)
*Noah*(プロフ) - ついに夢主を認識しましたか!キャプテンがこの後どうするのか、夢主ちゃんとどうなるのかすごく気になります!大変だとは思いますが、頑張ってください。応援してます!! (2023年1月17日 17時) (レス) @page28 id: aaa7af5a28 (このIDを非表示/違反報告)
りりあさん。 - あ“あ”あ“あ”あ“続きまってますううう!!!!!!! (2022年11月15日 21時) (レス) @page25 id: 60176f6c78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チャシャ猫 | 作成日時:2021年8月23日 0時