64 10/15 ページ24
午後5時。
櫻井さんが手配してくれたビジネスホテルの15階の窓から下を見下ろす。
ちょうど会社のビルの出入り口が見えたから、せっかくだし出てくるところを確認できたらな、なんてそんな余裕すら生まれていた。
5分程経って出てきたのは、見間違えるはずもない、大好きな彼。
足早に…なんてもんじゃない。
結構なスピードで走ってホテルに向かってる。
……雅紀君の言ってたことは本当なのかな。
あの姿を見てしまったら、やっぱり期待したくなる。
しばらく経って、コンコン、とドアを叩く音。
「A？いる？」
焦ったような声のトーンに、やっぱり胸がきゅっとなって目の奥がツーンとした。
「…どちらさま？」
「……智様！」
ちょっと怒ったようなその口調にさえ、愛おしさを感じてしまうのはなぜだろう。
離れたくない、ただそれだけ。
智とずっと一緒にいたい。
鍵を開けてドアノブに手を掛けると、勢いよくドアが開いた。
どうにかぶつからなかったけど、寸手のところでドアが止まって、それに驚いた私は後ろによろけた。
「っ、」
「、ぶねー……」
智の腕が背中に回って、支えられてる形になって。
目があったら一瞬寂しそうな顔をして、体を離した。
「…なんか飲む？俺買ってこようか」
「私はいいよ、さっきお茶煎れて飲んだ」
「…俺も飲もっかな」
「緑茶おいしかったよ」
「んふ、まじか」
智が照れくさそうに笑う。
それだけでもう泣きそうとか、ちょっとこの空間で泣かないようにするの、難しいかもしれない。
勝手に涙が出そう……
それからお茶を煎れて、ふたりで窓際のイスに腰掛けてふう、と息を吐いた。
「ほんとだ、うめぇ」
「でしょ？ビジネスホテルの割にクオリティ高いよね」
「ん」
「……」
「……」
……雅紀君に何か聞いたのかな。
私が一週間だと思ってヘコんでるとか…。
目を合わせづらいな。
智は口をへの字にしたまま湯飲みをじっと見つめてる。
……なにを考えているんだろう。
「……」
「……A」
「、」
「話していい？」
「……うん」
「Aも話してくれる？」
「え、」
「自分の気持ち。俺がどう思ってるか関係なく、Aの素直な気持ちが聞きたい」
「……」
やっぱり少し寂しそうな顔をする智に、胸がぎゅうっと締め付けられた。
私の素直な気持ち？
……そっか、、
私、智にちゃんと話したこと、なかったかもしれないな。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1284人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さゆ(プロフ) - こんにちは。とっても素敵なお話をありがとうございました(*´∀｀)何回読んでもぐっときます！妬いてるのも独占欲強いのもかわいい。まっすぐな智くんが素敵すぎです。また、智くんで書いてほしいなぁ。楽しみにしてます。 (2020年3月5日 12時) (
レス) id: b39ec88e32 (このIDを非表示/違反報告)
智恵里(プロフ) - うわぁーん(。´Д⊂)素敵すぎます！！幸せになってくれて良かった！！ (2019年11月18日 20時) (レス) id: 82290003ef (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - さぼてんさん» さぼてんさん、こんにちは！無事完結しました！次のお話もお付き合いいただけると嬉しいです♪ (2019年11月18日 11時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - ともさん» ともさん、こんにちは！楽しんでいただけたようでよかったです(*^_^*)コメントありがとうございます！ (2019年11月18日 11時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - ていくさん» ていくさん、こんにちは！お話、最後までお付き合いいただき、楽しんでいただけたようでよかったです(*^_^*)ニノのお話読みたいと言ってくれる方がいてよかった(笑)一歩踏み出す勇気が出ました(*^_^*)いつもありがとうございます！ (2019年11月18日 11時) (レス) id: 2a9d2935f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うさこ
| 作成日時：2019年9月7日 0時
