10話 5/29 ページ28
唇を離した智君は不思議そうに言った。
｢熱ある？｣
｢な、ないと思う。･･････熱く感じるなら、ドキドキしてるからだと思う｣
｢わりぃ。やり過ぎた｣
立ち上がって離れる智君をぼーっと目で追っていたけれど、風が動くのを感じると、私も慌てて立ち上がった。
ぬくもりが離れたのが寂しくて。
智君はサンダルを履いて、外に出ていこうとする。
｢どこに行くの？ 仕事は？｣
｢今、煩悩だらけだから休憩入れる。A、アイス食う？｣
煩悩･････。
私のせいで煩悩が？
恥ずかしいけど、嬉しい･･････。
｢いる｣
｢待ってて｣
外から母屋に入っていった智君が戻って来るのを待つ間、私は智君の作業中の木鼻をじっくり眺めさせて貰った。
どれだけ見ても飽きない。
すごいなぁ智君って。
そばには愛用のノミが何種類も置いてある。
小さな頃からこの道具をずっと持ち続けて、努力してきた結果なんだよね。
･･･････私にはそういうものが何もない。
留学はしたけれど、だからと言って、それがどう就職につながるのかわからない。なりたいものがあるわけでもない。
智君が誇れる幼なじみになろうと思って、とりあえずやれることはいろいろやってきたけど、私には何もない･･･････。
私は周りを見回した。
智君の道具は神様の住まいを作る神聖なものだから、おいそれとは触れない。
職人さんはもれなく全員、それぞれ自分だけの道具を持っていて、手入れに始まり、手入れで終わるほど、それを大事にしている。道具の良し悪しは仕上がりを大きく左右するという。
私は歩いていって、棚の中から誰のものでもないノミを一本取り上げた。
昔、何回か持たせて貰ったことはあるけど、当時は力が足りなかったから、刃が木に入っていかなかった。
木くず入れから破片を一つ拾って、見よう見まねで金づちでノミを打ち込んでみたけど、当時と一緒でやっぱりうまく入っていかない。
｢あれ？ どうして？｣
｢持ち方が変だよ？｣
振り返ったら智君が土間に立っていた。
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ao(プロフ) - えむさん» えむ様こんばんはー。出勤お疲れさまです。更新時間はずれますが、どこぞの時間に入れていただいて、またお話を楽しんでいただければと思います。更新先でもお待ちしております！ (2020年6月3日 20時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» kei様こんばんはー。私もプロポーズされた気になって作ってました。作れて幸せでした。まだまだ幸せ続きますよ！お楽しみに！ (2020年6月3日 20時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ていくさん» ていく様こんばんはー。スーツ姿の回ありますからね！お楽しみに！ (2020年6月3日 20時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ひつじーさん» ひつじー様こんばんはー。幸せですよねー。私も作っててずっと幸せです。移行したので引き続きよろしくお願いいたします！ (2020年6月3日 20時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» keiちゃんこんばんは。ママに指輪のサイズ聞く、狙ってるのか天然なのかわからない智君が私は大好きです！（告白しちゃった！）このあとも智君の男前度と主人公ちゃんの可愛さは増す一方なので、お楽しみにね！ (2020年6月3日 20時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2020年5月8日 13時
