2話 ページ34
雅紀君が眩しく見えた。
きっと雅紀君には私と違ってたくさんの友達がいるはず。
みんなの人気者で、頼りにされて。
どうしたらこんな人になれるの？
涙をこぼした私を痛々しそうに目を細めて見たのは一瞬で、雅紀君はやっぱり明るい笑顔を浮かべて私を見下ろした。
｢優しく出来てる？ なら良かった！｣
そう言ったあと、雅紀君は焼けたマンションを見に来たたくさんの野次馬がいるその隅で、俯いて泣き出した私をそっと抱きしめてくれた。
｢大丈夫、大丈夫。大丈夫だからね。･････大丈夫｣
その言葉は、魔法のように、私の不安だらけの胸に暖かく染みていった。
やってきた店長は車を降りてマンションを見るなり、｢あっちゃー！｣と呟いておでこを撫でていた。
その言い方が何だか妙に面白くて、張り詰めていた緊張が解れて、肩の力が抜けた。
｢大家さんどこ？｣
普段、ゆるーい店長で翔さんの方がよほどしっかりしていそうに見えるんだけど、その時の店長は違った。
私が遠くにいる大家さんを示すと、すぐに大家さんの元へ向かい、何かを話し出していた。
戻って来ると、｢話つけたから、うち行こ｣そう言って、車の方へ歩き出した。
強引じゃないけど、有無を言わせない店長の背中。
なんか、いつもと違う。違うけど、その背中が何倍も大きく見える。
でも、いいのかな･････。
戸惑って動けないでいると、後部座席のドアを開けて手招きしてくれた。
店長･･････。
｢行こう？｣
雅紀君が私の肩を抱いて店長の方へ足を踏み出させてくれた。
私は、二歩目を自分で踏み出した。
大野家は、お店から車で１０分程のところにあって、住宅街から少し離れた高台にある古い洋館だった。思っていたより雰囲気のある佇まいに驚いた。
家の外には、既に話を聞いていたらしく、心配そうに翔さんと和也君が迎えに出て来てくれていた。
｢早く入りな。 飯食ってないよね？ パンなら山ほどあるから。ご飯が良かったらチャーハンとかもあるし｣
翔さんが早口で言ってくれた。
店長は、まるで観たいテレビでもあったかのように、その横をすり抜け、部屋に入って行く。
雅紀君はずっと私の後ろにいてくれていた。見上げたら、優しく笑って頷いてくれる。
｢どうぞ。いらっしゃい｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 930人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - えむさん» えむ様いつも応援ありがとうございます！癒やしと萌はいついかなる時でも重要ですよね！あればあるほど嬉しいもの。大野家のみなさんに是非癒されて下さいね。楽しみながら頑張ってまーす。 (2019年12月19日 21時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - なおさん» なお様こんばんは。もしやタンポポ色のあのお方のご担当？私もかき乱されているので尚更のことと拝察致します。癒やしと萌をお届け出来るように頑張りますね！ありがとうございます！ (2019年12月19日 21時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - aoさん、おはようございます！やっぱりaoさんのお話を読むと暖かくなれます。次回の更新も楽しみに待っています(*´∇｀*) (2019年12月18日 10時) (レス) id: bd8350da83 (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - なんだか最近は自担に心をかき乱される事が多いのでaoさんのお話で癒される毎日です。いつも楽しみにしています！ (2019年12月18日 10時) (レス) id: 19cc532da8 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - 萌和*さん» 萌和*様おはようございます。萌えにニヤニヤとだらしない顔をして作っている私に、紡ぐ言葉だなんて綺麗な表現を頂戴できて、凄く凄く嬉しいです。マイペースで頑張らせて貰いますね。ありがとうございます〜。 (2019年12月14日 6時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2019年11月26日 8時
