5話 ページ37
おーちゃんは雅紀君が帰って行くと、私に言ってくれた。
｢あと一杯｣
｢いいの？｣
微笑んで頷いてくれるおーちゃんの姿はどう見てもバリスタのおーちゃんではなく、いつものあのアパートで見せるおーちゃんで、思わず吹き出してしまった。
｢なに？｣
｢だって不思議だから。さっきここで女の子に見せてたカッコイイバリスタの顔とは全然違うから。いつものおーちゃんが中にいるのが新鮮なの｣
おーちゃんはむくれて言った。
｢そんなの意識してねぇわ。･･･････Aだし。入り込めねぇでしょ？日常がここにいるんじゃ｣
私はおーちゃんの日常なの？
特別じゃないって言われちゃったんだけど、凄く嬉しかった。
｢じゃあ翔君が前に飲んでたアドニス｣
ふふって笑ったおーちゃん。
早速作りはじめてくれたんだけど、その動きはどう見てもエスプレッソで、私が目を見張っているうちに、表面に真っ白のキャンバスが出来上がっていた。
ラテアートを作ってくれるの？
･･･････私は胸がいっぱいになった。
おーちゃんは道具を手に、優しく笑って言った。
｢欲しかったんだろ？｣
頷いたら、涙がぽろりと落ちちゃった。
作って欲しかったけど、時間もないし、洗い物も増えるし、手間だろうって諦めてたの。
･･･････おーちゃんには敵わないや。
｢すごいね、おーちゃん｣
へへって照れて笑いながらも、繊細で緻密な手の動きは続いてて、私はその職人技にずーっと見入った。
出来上がったのは、綺麗な桜の花だった。幾重にも重なる八重桜。それは、描いてる最中に少しでも揺れたら全部やり直しになってしまいそうな緻密さだった。
｢すごい･･････。あの台形を作った人に見えない｣
言ったら、照れ臭そうに小さく笑った。
｢スカート穿いてくっからだろ｣
その文句を聞いて、やっぱりあのラテを作ったのはおーちゃんで、台形はスカートの形だったんだって分かった。
可奈さんのラテが、松にぃには伝えていないはずの記者という職業を記したものだったのも、おーちゃんが発案者だったからだね。おーちゃんには記者だっていうことを伝えていたから。
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なるちゃん(プロフ) - 堪能した この言葉がぴったり当てはまるすばらしい作品でした！ 喫茶店がオープンしてからのエピソードも楽しみにしています！ (2019年7月1日 8時) (
レス) id: ed0a73ac99 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - はるさん» はる様こんにちは。嬉しいコメントありがとうございました。私も大好きなお話でした。また書けるといいなぁって思います。ほんと、主人公ちゃん羨ましかったですねー。読んでくださってありがとうございました！ (2019年4月5日 9時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - aoさん、こんにちは。素敵なお話をありがとうございました。ゆっくりと進む感じの二人がとても素敵でした。智ちゃんが格好よくて主人公ちゃんが羨まし過ぎです。また続きが読める時がきたら嬉しいです！ありがとうございました！ (2019年4月4日 15時) (レス) id: b3c5b647ee (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - kikiさん» kiki様、コメント嬉しいです！kiki様のご都合のいい時に遊びに来ていただいて、余裕のある時にまたコメント下さったら嬉しいです。私はいつでも両手を広げて萌えるカッコイイ青色さんを用意してお待ち致しておりますので。頑張りまーす！ (2019年4月4日 9時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - 忙しい中、癒されてます。ゆっくりコメントできず申し訳ありません。でも、毎回楽しみにしております。 (2019年4月2日 8時) (レス) id: 53337431dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2019年3月13日 10時
