23 おモテになる理由 ページ23
｢大野先生がおモテになるのわかります｣
主任の言葉に振り返った。
頬に手を当てて、夢見るように溜息を一つ。
｢回診の時に、抜糸の処置中に看護師が盛大にトレーを落としても怒らなくて、新しいガーゼを取りに走ってる間、大野先生は椅子に座って、患者さんとお孫さんの話しで盛り上がってたんですって。謝りながら病室に戻ってきた看護師に、来るの早いよって患者さんと笑いながら言ったそうですよ。お忙しい身なのに、全然偉そうになさらなくて、その人間性が素晴らしいですよね｣
･･････智は昔から女の子だけじゃなくって、お年寄りにも人気があった。
様子が想像できるような話にジーンとしかけたけど、立場的にへらず口を言うしかなくて。
｢優しいのは結構ですけど、お陰で図に乗った看護師を注意するのはこっちなんですから｣
｢まぁ、そうなんですけどね〜。ファンクラブ作ろうかって言ってる人もいるらしいですよ。彼女もいないそうですし｣
私は目を見開いた。
そんなばかな。
｢櫻井先生、相葉先生、二宮先生、松本先生、その四人と合わせてＤファイブって呼んでるそうですよ。ドクターのＤで｣
｢彼女いますよ･････｣
｢えっ、そうなんですか？ あら、やっぱり〜。いないなんておかしいと思ったんですよね｣
私は口を閉じた。
彼女がいるって勝手に言っても良かっただろうか。でも後で泣く子が出るよりはいいはずだ。
感心している主任を残してデスクに戻った。
｢おつかれ｣
食堂で、上司である看護部長とご飯を食べていたら智が隣に座ってきた。
なんで隣！
でも新鮮だった。
余程忙しいのだろう。この病院にやって来て一ヶ月、智が食堂に現れる姿はこれまで見たことがなかった。
｢珍しいですね。あれ？手術だったんじゃあ････｣
｢延期になったから｣
｢えっ!?｣
｢直前でびびって｣
智ではない。もちろん患者さんの方だ。
私は食べかけていたご飯をおいてナースステーションに戻ろうとした。すると智が腰を上げた私の服をチョンチョンと引っ張った。
｢飯食ってからでもいいよ。主任が行ったし。呼ばれねぇってことは行かなくていいの｣
その言葉で、躊躇ってから座り直した。
隣からは呑気にうどんを啜る音。
･･････私の欠点を即座に指摘する智ってばいったい何者なの？
･････ううん、そうだった、優秀なドクターだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 736人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - あゆねさん» あゆね様ありがとうございます！私も羨ましいです。こんな元彼がいたらいい思い出作れそうです。頑張ります。感謝です。当分 (2018年11月15日 14時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
あゆね - このお話がとても好きで、毎日読んでいます！主人公ちゃんがほんとに羨ましいですね(笑)これからもaoさんのペースでがんばってください！応援してます！ (2018年11月12日 0時) (レス) id: 1048fe7101 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様、読んでいただけて感謝です。二人に挟まれて羨ましい限りです。今後もご期待下さいませ！ (2018年11月11日 7時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
ユミ(プロフ) - 今日も続きが読めて嬉しいです！翔くん出てきたー！と思ったらかなりグイグイでキャー！です。智ってば寝てる場合じゃないのにー！とニタニタしておりますよ（笑） (2018年11月10日 20時) (レス) id: 5a2a163833 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ユミさん» ユミ様コメントありがとうございます〜！新作も萌えを追求していますので、是非ご一緒にときめいて下さい。気に入ってくださるといいのですが。ありがとうございます！ (2018年11月8日 20時) (レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2018年11月1日 14時
