３ ページ28
※ＦＢ視点
「隊長、ナノ見失っちゃった！」
俺は慌てていた。
視界の端で捉えていたナノが、建物を飛び越えた先で見つけられなくなったのだ。
隊長に言えば、隊長は冷静な声音で俺に言葉を返してくる。
『あぁ？ …探せ、ＦＢ』
「で、でもナノには隊長援護しろって…」
『いいから！ シィナノルト探せ！』
「……はい！」
スナイパーライフルを抱え、走りだす。
腰に携えたナイフの感触を確かめながら、道を走って行く。
消えた先の建物の方へ向かう。
『あろま呼んだ、いま』
「あろま来れるの、隊長？」
『それなりに手は開いてるってよ。本陣は俺が叩く。きっくんのヘリサポートもあるはずだ、それなりに大船に乗ったつもりで動け』
隊長の強い言葉が返って来て、はい、と俺は強く言葉を返した。
俺にできることは、ナノを守ることだ。
(今度こそ)
握りそこねたこの手を、あの時程恨んだことはない。
咄嗟に機転を利かせられて、あの場所だったからこそナノも助かっただろうが、他ではそうもいかない。
(今度こそ、助ける)
遠距離兵として配属され、それとして生きてきた。
傭兵になってもその立場は変わらず、後ろでスナイパーライフルを握り、この手で幾度も仲間の背を守ってきた。
だから、と、それに固執しているわけでも、「言われたから」でもない。
(俺は俺として、ナノを守るって決めたんだ)
だから、絶対。
「無事でいて、ナノ……！」
確認できなくなった場所へようやく辿り着き、靴が床を噛んだ。
雨も降っていないというのに、一瞬足を滑らせかけて何事かと下を見た。
「…ッ！」
赤だ。そこにあったのは赤。点々と続いていく赤は、奥へと伸びている。
「……ナノ……！」
その後から、赤を踏んだと思しき靴跡が幾つも残っている。
敵兵の靴跡だ。数からして１０数人。
ナノが見逃したとは思いがたい。そうなれば、さらに追跡していたのか。
「急がなきゃ」
さらに廊下を進んでいく。
靴底が床を踏む音が聞こえて、俺はその部屋扉前に立った。
「…ふぶ、さん」
座り込んだ赤い髪。その手が同じ赤に染まっている。
濃紫の瞳が驚きに満ちた光で俺を見ている。
その前に立ち塞がっている１０数人の敵兵を見据えて、俺はナノに笑った。
「安心してね、ナノ」
「ふぶさん…っ、逃げ、」
「……すぐ行くから」
俺の手が、腰に携えたナイフの柄にかかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長閑(プロフ) - 麒麟さん» 書いてる話が男主なんでどうしてもそういうふうに傾いてっちゃうんですよね、なんででしょう（すっとぼけ←） 読んでくださってありがとうございました！ (2015年6月28日 19時) (
レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
麒麟 - 面白いです！これはﾎﾓｫ・・・「(^o ^)」な展開ですかね・・・！ (2015年6月28日 18時) (レス) id: a165517e8f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長閑 | 作成日時：2015年2月28日 3時
