いとおしいね、

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二個上の姉は高校三年生で、大学受験を控えていた。そのため、遅くまで学校で講習や自習をして、家に帰ってきてからも夕飯とお風呂以外は部屋から出てこなかった。

小・中は同じ学校に通っていたが高校は別だったため、高校で会うことなんて勿論ない。家でも俺が姉と顔を合わせることはほとんどなく、時々あっても言葉を交わすことはなかった。

同じ家を出て、同じ家に帰ってきて。確かに同じ空間にいるはずなのに、距離はずっと遠い国と国を跨いでいるような感覚だった。


当然の事ながら、親にはとても心配された。あんなに仲が良かったのに、急にどうしたのか。喧嘩でもしたのか、とそれとなく訊ねられたが適当に誤魔化した。

思えば、こうして喧嘩をするのは初めてだ。喧嘩といっても俺の一方的なものだが。


どちらか、というよりも、避けているのはお互いにだった。俺は自分が言った手前、普通に話しかけることなんてできないと思っていたから。姉は、やさしいから。俺が嫌なことは絶対しない人で、とにかく俺に甘いから。

でも、家で偶々顔を合わせた時になんとなく感じた。俺のこと怖がってるなって。身長とかもあるのかもしれないけど、そういうのじゃなくて。姉がなんで怖がってるのかなんて、自分でとっくに気づいていた。


俺と姉のそんな日々は、冬が去って、雪解け水が道路を濡らし始める時まで続いた。

姉は無事に第一志望の大学に合格したらしい。俺も進級したら後輩ができるからと、いつもより気合を入れて部活に取り組んだ。









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