いとおしいね、

あの日の姉に、 ページ11

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もしも、なんらかの手段や方法で昔に戻れるのなら。俺はあの日に戻りたい。





物心ついた頃には既に姉は弟の俺に甘くて、そんなやさしい姉が俺は大好きで。

高校一年生だった俺は、友達にもよく｢お姉さんと仲良いね｣なんて言われていた。そう思われるのは素直に嬉しかったけど、"お年頃"と呼ばれる歳の俺にはほんの少しだけ恥ずかしさもあった。


その日は丁度、俺が帰ってきた時、家には姉しかいなくて。多分、タイミングとか、俺の気持ちの問題とか、色んなものが重なっていたせいもあったのだと思う。

姉に酷いことを言った。仲がいいと思われるのが恥ずかしいとか、周りにシスコンだのと言われたりしたら嫌だとか。そんな、思春期的なプライドを姉にぶつけた。

言った後、ふと我に返って姉を見た。
すごく寂しそうな、悲しそうな顔をして｢ごめん｣と謝られた。姉のそんな顔は、今まで見たことがなかった。
今にも泣いてしまいそうな姉に、結局俺が耐えられなくなって自分の部屋に逃げ込んだ。


夏が終わって、もう残暑も去り際。窓から入り込み、頬を撫でる風は夏の暑さなんてどこかへ消えてしまって、とっくに冷たかった。

いつも手を引いてくれた姉の手の温度を鮮明に思い出してしまって、俺はどうしようもなくなった。









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