見捨てられる ページ35
気づかなかったけど、確かに頬が濡れている。
私は袖で拭おうとしたけど、ただの夜着なのに肌触りの良い最高級の布であることを思い出してオロオロした。
アルドが急いで布を差し出してくれたので涙を拭き取る。
「今日は休みにしましょう、レティシア様。もし御用があればお呼びください」
どんなときでも本を積み上げて私にペンを握らせたアルドだったが、今日はダメだと悟ったのか、それとも私ができが悪すぎて、見離したのか。
戻ろうとしたアルドの袖を掴む。
アルドは、私にとってこの城で一番信用できる人。
例え、アルドにとって私は大したことのない存在だとしても、すがってしまう。
「お願い……行かないで。私を見捨てないで」
アルドの目が再び驚きに見開かれる。
「見捨てるなどとんでもない。……何があったか存じませんが、私はレティシア様の補佐です」
違う。
「あなたは……将来、お父様に仕えたいんでしょう? だから、私のところで実績をあげて、上に上ろうとしてるんでしょう?」
初めから、私はアルドにとって通過地点でしかない。
踏み台とまではいかないが、似たようなものだと思う。
彼の夢をここで潰してはいけない。今は私の補佐でも、すぐに国を支える大きな柱になるだろうから。
わかっている。
わかっているんだけど。
「レティシア様。王族がたった一人の従者にそこまで執着してはいけません……と言いたいところですが、あなた様の世界を縮めたのは私ですね。申し訳ありません」
やんわりと手を袖から離される。
見捨てられるのだ、やっぱり。
奥歯を噛み締め、どうにか涙を堪えようとして。
「何をしているの、アルド?」
アルドが私に膝まづいていた。
「あなた様に一生お仕えする、という覚悟はできておりません。私のような二心のある者をお側に置いてくださるのは一重にレティシア様の温情です。どうぞ、切り捨ててください……それで、あなた様が涙を流さずにすむのなら、私は何でも致します」
ひゅ、と喉の奥で変な音が出る。
アルドは、慰めてくれようとしているらしい。
慰め方がわからなくて、不器用で、それでも、自分の出世を潰すくらいには私に泣き止んでほしいと。
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蒼鉛 - れてぃちゃんかあいい (2020年11月20日 21時) (レス) id: 0d8498869d (このIDを非表示/違反報告)
ネロ(プロフ) - ななさん» ありがとうございます! 更新ゆっくりになるかもですがよろしくお願いします! (2020年4月26日 13時) (レス) id: c7ce3281d5 (このIDを非表示/違反報告)
なな - とっても面白いです!絵も上手ですね〜!夢主ちゃんめっちゃ可愛い!更新頑張ってください! (2020年4月24日 21時) (レス) id: 0166b3d8d2 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ(プロフ) - 小倉さん» ありがとうございます(*>∇<) (2020年4月22日 12時) (レス) id: c7ce3281d5 (このIDを非表示/違反報告)
小倉(プロフ) - おおお…面白い物語が始まりそう…!こっちも頑張って下さい!(`・ω・´)b (2020年4月22日 12時) (レス) id: 6c749d243c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネロ | 作成日時:2020年4月22日 11時