魔王の一人娘になりまして。【オリジナル】

望まれず生まれた子 ページ28

「陛下、は……エメラルド宮におります。今日は、ユリカ様の祥月命日なので」



　……私の誕生日に、私のママは死んだ。



　なんとなく、そんな気はしていたけど。



　改めて聞くと、嫌な予感がする。





　医療の発展していないこの世界で、出産は命がけだろう。

　子供の命と母の命。どちらかとれないような状況だってあるかもしれない。




　そんなとき、私のママは。私のパパは。

　どんなことを思うのだろう。




　私は生きて、ママは死んだ。そして、パパは私が嫌いで、ママが好き。

　パパは、私よりもママに生きてほしかったんじゃないかな。



　なん、だろう。
　私は、この世界のパパとママを本当の両親とは思えない。だって、本当の両親は地球にいるから。だけど、レティシアが望まれて生まれた子じゃないって言われてしまったら。



　ものすごく、嫌だ。



「レティシア様。顔色が優れません。医者を呼びましょうか」



　アルドの空色の目が私を見ている。



　ーーしっかりしろ、私。このパーティーの主役は私だ。こんなところで憶測で傷ついている場合じゃない。



　きっと、パーティーの準備も大変だっただろう。
　それを滅茶苦茶にしちゃいけない。




「ううん、平気！ パーティーを続けて！」



　
　無理矢理だけど、笑顔を作った私に、アルドが一瞬だけ微笑んだ。



「さすが、レティシア様です」




　『ヴァンサン陛下の子』ではなく、『レティシア』を。
　初めて、アルドが私を見てくれた気がした。

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