魔王の一人娘になりまして。【オリジナル】

郷愁 ページ23

「どうしたらいーのよ！ 私帰りたいよ！？ 本当のパパとママにずっと会えてないんだからね！」



　私だってもう中学生。
　親にずーっと会えてなくても我慢はできる。


　でもね？
　知らない人しかいない世界で、王様に命を脅かされて、アルドでさえ私に心を開いてくれなくて。




　帰りたいに決まってるじゃない。


「お気の毒だとは思いますが、国のために自制してください」



　アルドが、これで話は終わりだと言わんばかりに立ち上がる。
　手帳も持っていかれてしまった。



　国のため国のためって、私はフツーの中学生だよ。



　しかも肉体年齢なんて五歳なんだから。


　久しぶりに泣きたくなってきた。
　……ううん、そんな弱気になっちゃだめ。


　帰れないって決まったわけじゃないし、みんなには悪いけど、私だけでもコッソリ帰る方法を探そう。




　とりあえず、アルドに勉強を習って『銀髪』や『銀の神』についての文献を読もう。



　そしたらいつか、地球に帰った人が見つけられるかもしれないんだ。
　きっと大丈夫。


　大丈夫大丈夫。




「……う、く」


　ぽろり、と涙が頬を流れる。

　怖い。怖いよ。


　もう会えなかったらどうしよう、って。
　まだまだ会えると思ってたのに、って。

　嫌な妄想ばかりが広がって。



「……大丈夫か？」

「へ？」


　サファイア宮の庭園でうずくまっている私に声がかかった。



　話しかけられると思ってなかったから、ビックリして涙が止まってしまう。


　顔を上げると、私とそう変わらない年頃の男の子が。
　紫色の髪をした、小さな子が、私を見つめていた。

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