心臓血管外科医局の仮眠室 ページ7
何だか病院に潜入したみたいな気分になってきて、それはそれで楽しくなってきたから私はそろりと忍び足で医局へ。
でも、さっきから全然人とすれ違わない。
まだお昼休憩の時間帯じゃないし…回診とか?
不思議に思いながらそっと中を覗いた。
「なぁんだ、誰もいないじゃん」
ガランとした医局。
みんな忙しくて出払っているのか。
ふと、誰かの机の上に付箋が貼ってあるのに気づく。
そこには『10時〜11時カンファレンス』と書いてあった。
只今の時刻、10時28分。
おや、カンファレンスもうとっくに始まってるじゃないですか。
院内をフラフラ歩いてたら、いつの間にか結構時間が経ってたみたい。
佐伯教授、私の事カンファレンスで紹介するとか言ってたけど…行った方がいいのかな。
…まあ、どうせ最後の方にちょこっと紹介するだけだろうしもう少し経ってから行こ。
呑気にそう考えて本当の目的地である場所の扉を探す。
「あった」
仮眠室だ。
みんなカンファレンス中みたいだけど、どうせ"彼"のことだから出席なんてしてないだろう。
ドアノブに手をかけて音を立てないようにゆっくりと扉を開く。
そろりと、またまた足を忍ばせて一番奥にあるソファへと近付いた。
久々に会うんだし驚かせようと思って、背もたれの後ろに隠れてから、勢い良く飛び出してみる。
「ありゃ?」
ソファの上はもぬけの殻。
抜け殻みたいに毛布が投げ出してあるだけ。
「居ないのかぁ。珍しいな、どっかに行くなんて…」
何か気になることでもあって調べに行ってるのか、カンファレンスに強制参加させられているか。
とにかく、"彼"──"渡海征司郎"の姿はそこには無かった。
仕方無くソファに座って帰りを待とうかと思ったらふと、机の上のタブレットに目が行く。
私が見たって征司郎は怒らないだろうと思って電源ボタンをひと押し。
画面が表示される。
「これは…患者のデータ?」
原田正典。50代男性。血液型はB1。僧帽弁の手術のために入院。
来週、佐伯教授による執刀が予定されている。
心臓の症状はそこまで重くないみたいだけど…。
スクロールして現れたエコー写真。
どうやら問題は腹部大動脈瘤のようだ。
珍しい症例ではあるけれど、私も一度ドイツで執刀したことがある。
「それにしても、この状態…。早く手術した方がいいんじゃ…」
何だか嫌な予感がする。
当たらないといいけど。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時