東城大学 ページ6
≪Your side≫
ドイツから帰国してはや一週間。
引っ越しが完了した私は、新たな職場となる東城大学医学部附属病院へと訪れていた。
裏口で出迎えて下さった藤原師長に連れられて佐伯教授の部屋へと足を踏み入れる。
佐「ようこそ東城大へ。久しぶりだね、北見くん」
「ご無沙汰しております」
差し出された手を取れば、教授は人の良さそうな笑みを浮かべた。
佐「どうだった。海外の医療は」
「とても素晴らしいものでした。最新の医療に触れ、多くのことを知り、学ばせて頂きましたよ」
佐「そうか。実りの多いものになったようで何よりだよ。その経験を今度はこの東城大で活かしてくれたまえ。今日から君は、佐伯外科の一員となるのだからね」
「はい。この佐伯外科が少しでも多くの命を救えるよう、誠心誠意尽くさせて頂きます」
私は差し出された黒いスクラブと白衣、ネームタグを受け取る。
真っ直ぐに教授の目を見つめれば、彼は満足そうに笑って「期待しているよ」と頷いた。
佐「君の紹介は10時からのカンファレンスにて行う。それまでは自由に院内を歩き回ってくれて構わんよ」
「かしこまりました。お気遣い感謝致します」
私は深く礼をして教授室を後にした。
教授は私が拘束されるのを嫌うことを知ってか知らずか、歩き回る許可を下さった。
ならばお言葉に甘えるとしよう。
早速更衣室へと向かい、着替えを済ませる。
初めて袖を通す黒いスクラブ。
憧れだった東城大の白衣。
胸のポケットにネームタグと、愛用しているペン、それからライトを入れる。
荷物と服をロッカーへと入れ、鍵をかけると私は軽い足取りで廊下へと出た。
見慣れているはずの白い廊下はやはり以前居た病院とはどことなく違っていて、私の好奇心を少し擽る。
探検がしてみたい。
そう思ってフラフラと様々な所を歩き回った。
人気の多いところに出れば自然と患者や医者、忙しそうに走り回る看護師にすれ違うけれど、誰も声をかけてこない。
東城大の職員からしてみれば私は見知らぬ人で、そんな人がスクラブと白衣を着て歩き回ってるんだから、誰かしら何か言ってくるかなって思ってたけど…。
忙しすぎてそれどころじゃないのかな。
それとも単純に興味がないのか。
どちらにしろ私には好都合。
折角だし、"彼"に会いに行こう。
そう思って私は外科の医局へと足を向けた。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時