あの人みたいだ ページ49
《Sera side 》
「腕の良い医者は何をやっても許されるの。覚えておきなさい」
北見先生は、口の端を吊り上げて笑う。
それから、くるりと背を向けて何処かへ歩き出した。
何も言葉が出ない。
何だ。何なんだ。
試すって。
世「"人を救える人"か試す…?」
そんなことして一体何になるっていうんだ?
この医療現場から人を減らすつもりでもあるのか?
いくら腕の良い医者だって、人手が無きゃ救える命も救えなくなるだろ。
それなのに、なんであの人たちは…。
白衣に包まれた背を呆然と見送る僕の肩を、誰かがトンと叩く。
高「大丈夫か?」
振り返ると、高階先生が立っていた。
隣で花房さんも僕を心配そうに見ている。
花「途中からでしたけど…内容は分かりました」
高「少し話をしよう。付いて来てくれるね?」
力なく頷いて高階先生に付いて行く。
人気の無い廊下へやって来て立ち止まると、近くにあったベンチに座るよう促された。
大人しくそれに従う。
高「随分と色々言われてしまったようだね」
世「はい…。北見先生ってあんな人だったんですね」
まるで、あの人みたいだ。
幼馴染は伊達じゃないってことですか。
そんなとこまで似なくてもいいだろう…。
花「先生のやり方には、私も納得できません。
でも、あそこまで自信満々に言われちゃうと何も言えませんよね」
本当に花房さんの言う通りだ。
何も言い返せなかった。
僕だって理解はしている。
人に、命に、向き合うことがどれ程大変で、覚悟が生半可じゃ駄目なんだって。
でも、頭に感情が追いつかない。
高「人を試す、か…。Aらしいと言えばそうなんだが」
花「北見先生は、アメリカでもあんな感じだったんですか?」
花房さんの問いに高階先生は少し唸る。
高「アメリカで、と言うよりはドイツで、と言った方が正しいだろうね」
世「ドイツで?」
高「あぁ、彼女はドイツの病院では同じ様に医療に携わる人を試していたと聞いている」
ドイツでも同じ事を……。
高「そこで、Aについた名前がある」
花「名前…ですか?」
高「Ӓrztin des Teufels」
聞きなれない発音。
これは、ドイツ語…?
高「人を試すことから来たこの異名の意味は、───」
僕と花房さんは揃って目を見開き、顔を見合わせた。
その意味は正しく彼女にぴったりな。
あの悪魔と幼馴染なのも頷けるものだった。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時