私のやり方 ページ43
佐伯教授の部屋から出て、ほっと息を吐く。
このまま回診に向かおうと考えて廊下を歩く。
その方が、教授の意味深な言葉とか表情とか忘れられる気がする。
角を曲がろうとしたところで三人分の話し声が聞こえてきた。
別に隠れる必要なんて無いんだけど、なんとなく立ち止まる。
黒「高階先生に書類を渡しておいてくれ。
あと、山本さんにペニシリンの投与も」
宮「分かりました」
一人分の足音が遠ざかっていく。
きっと黒崎准教授が去ったのだろう。
それにしても黒崎准教授の頭は大丈夫なのかな？
山本さん、ペニシリンはアレルギーなんだけど。
投薬したら大変なことになる。
そんなことすら把握出来ていないのか、と内心、呆れたため息を吐きながら私は壁に背を預ける。
花「あの…前担当だった渡海先生はペニシリン使ってませんでしたよね？」
この声は、美和ちゃんだ。
彼女は本当に優秀であると改めて思う。
征司郎がペニシリンを使っていなかったことにすぐ気づいた。
宮「でも今の担当は黒崎先生でしょ？先生の指示なんだから従わなきゃ」
もう一人の看護師は、確か…宮元さん？かな。
担当医の指示に従うことは当然ではあるよ？
でもねぇ…それが全てじゃないでしょう…。
また、ため息が一つ出た。
宮「私は薬の投与に行くから、高階先生の方をお願いね」
花「…分かりました」
結局、美和ちゃんは押し切られて書類を取りに行ってしまったようだ。
(仕方がないかぁ…)
私は宮元さんの後ろをゆっくり付いていくことにした。
今ここで注意して投薬を止めてもいいんだけど、それじゃつまらない。
担当医の指示だけが全てじゃないって。
自分で色んなことに気づくことも大事なんだってしっかり知ってもらわなきゃ。
さて、どうしようか。
投与しそうになった寸前で止めようかな。
止めるのがギリギリであれば、きっと彼女に"患者を殺しかけた"という強烈な記憶を刻むことになる。
それは大きな反省にも、今後どうあるべきか考える事にも繋がるはずだ。
…トラウマになる場合もあるけど。
ま、その時は辞めるなりなんなりして貰って構わない。
歩く宮元さんの後ろ姿をぼんやりと眺める。
これが決して正しい行動じゃないことは分かっている。
だって普通に注意すればいいところを、わざと看護師を傷つけるようなやり方をしてる。
でも、これが私なりのやり方。
『Ärztin des Teufels』
そう呼び名が付いた、私の、やり方。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます！そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね！ (2018年6月30日 23時) (
レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます！このお話とても好きなので、これからも頑張ってください！ (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね！これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜月 | 作成日時：2018年6月9日 2時
