東城大の女医は悪魔の幼馴染らしい

引き抜き ページ28

「帝華大から引き抜きですか…。それで征司郎はここを出て行ったと言う訳ですね」


佐「そういうことだ。君には済まないことをしたね」



征司郎が出ていってから4日間程経った頃。
佐伯教授から呼び出されて部屋へ行くと、征司郎が帝華大に行ってしまった理由を教授が話してくださった。

春江さんの件で、守屋院長から報酬を3分の1に減額されることを言い渡された征司郎は、2倍の報酬で帝華大から引き抜きがあった事を明かし、あっさりと帝華大へ移った。
と言う事らしい。


征司郎が出て行ってから医局でみんなが「金に目がくらんだ」などと言っていた合点がいった。
十中八九征司郎の事だろうとは思っていたが、こういう事だったのか。

とはいえ征司郎の事だ。
そう簡単に佐伯教授の懐に居られる状態を手放すとは思えない。
何か考えがあっての行動だろう。




　「わざわざ教えて頂き、ありがとうございます。征司郎が居ないのは寂しいですが…まぁ、彼が居ようが居まいが私がするべき事は変わりません」


佐「ほう」


　「目の前の患者の命を救う。それだけです」


佐「君ならそう言ってくれると思っていたよ」




ちょいちょいと手招きされる。
一歩、机を挟んで向こう側にいる教授に近づけば、ぽんぽんと頭を優しく叩かれた。

征司郎とは違って日によく焼けた大きな手が私の頭の上にある。
久々だ。佐伯教授にこんな風にされたの。




佐「そんな君に、1つ話がある」


　「何でしょうか」


佐「渡海が担当していた山本祥子さんという患者が居るのは知っているな？その彼女にカエサルでの治験を頼みたいと考えているんだ」


　「確かに、彼女の症例はカエサルの治験にぴったりですね」


佐「ああ。そこで、以前からケア担当である君から山本さんに治験にご協力頂けるよう話をして欲しい」


　「かしこまりました。ですが、治験の場合は治験コーディネーターからの説明が必要なはずですが」



CRC。通称治験コーディネーターは治験に係わる事務的業務、チーム内の調整等、治験業務全般をサポートする職業で治験の際には欠かせない。



佐「勿論分かっているとも。入りなさい」




教授がドアに向かって声を掛けると、失礼しますの声と共に小さく音を立ててドアが開いた。
中に入ってきたのは大人な雰囲気の美人な女性。
私の前まで歩いてくると立ち止まって軽く会釈した。




木「初めまして。この度山本様の治験を担当させて頂く治験コーディネーターの木下と申します」

治験コーディネーター→←出ていくってさ

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