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出ていくってさ ページ27

面食らった顔の黒崎准教授を置き去りにして、私はその場を去った。

明るくて賑やかな医局とは正反対の、少し暗くて静かな仮眠室。
その奥のソファで私はカエサルについての資料を読み耽っている。

部屋の主と化した征司郎は、守屋院長と佐伯教授から呼び出しをくらって今頃は院長室に居るはずだ。

この前、征司郎の母である春江さんが倒れて入院する事になり、そのオペをカエサルで行ったことは電話で征司郎や猫ちゃんから聞いていた。

そのオペで予想外の出血が起こった上に、輸血用の血が足りなくなったこと。
それを見兼ねた征司郎が規定の違反である近親者に対するオペを行い、春江さんの命を救ったこと。
そして、お咎めを受ける筈だった征司郎を但し書きによって救ったのが春江さんだったこと。

これら全てのことは色んな人から話を聞かされたので大体は把握している。

それでも全くのお咎め無しという訳にはいかないらしく、征司郎は何やら罰則を言い付けられているようだ。

そろそろ戻ってくるだろうかと考えていた矢先に仮眠室の扉が開く音がした。



 「おかえり」


渡「ん」




征司郎が戻ってきた。
そのまま衣類が纏めてある所まで歩いて来て、2泊分くらいのボストンバッグに服を詰め始めた。




 「何してんの」


渡「ここを出る為の荷造り」


 「は?何処行くの?」


渡「お前の大嫌いな帝華大」




コピー用紙に向けていた視線を外して征司郎に向けると、にやりと口角を上げて目が細められた。正に悪魔の笑み。




渡「一緒に来る?」




意地の悪い笑みが深くなる。
私が拒む事を分かってて敢えて聞いているんだ。




 「行かない。あんなとこ」




だって大嫌いだし。居心地悪いし。
何より、腕の悪い医者しか居ない。




 「行ったってどうせつまんないよ。死ねばいい医者ばっかりだし」


渡「そりゃ、稼げそうだな」




さり気なく"止めておきなよ"と伝えたけど躱されてしまった。
どうしても帝華大に行くつもりらしい。




渡「まぁ、また連絡するから。あんまり寂しがるなよ」




荷物を詰め終わったのか、バッグを持って立ち上がる。
右手にはいつの間にか脱いだ白衣が握られていた。




 「寂しくないし」


渡「はっ。そーかよ」



鼻で笑われた。
何かムカついたけど、ホントはちょっと寂しいから何も言い返さないでおく。




渡「じゃあな」




最後に私の髪を優しく撫でて、征司郎は仮眠室を出て行った。
大量の荷物を残して。

引き抜き→←カエサル



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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時

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