二時間後 ページ21
権の字との話を切り上げて飲み終えた缶をゴミ箱に入れると、私は征司郎を起こすべく仮眠室へと入る。
いつ開けたのか、窓から少し風が吹き込んでカーテンがはためいている。
その隙間から覗く空は茜色に染まっていた。
もう、夕方だ。
ソファに近づいて行くと、近くのベッドにもう一人誰かが眠っているのが見える。
こちらに背を向けてはいるが、フードを被って眠っているあたりおそらく猫ちゃんだろう。
そこを通り過ぎてソファへ向かう。
背凭れの後ろから覗き込むと頭から毛布を被っている征司郎が居た。
さて、どうやって起こそうか。
昔は、揺すっても起きないものだから(というか折角起こしてるのに狸寝入りを決め込まれる)毛布を無理矢理剥ぎ取ってみたり、しつこく名前を呼んだりして起こしていた。
でも今それをやると確実に猫ちゃんまで起こしてしまう。それは避けたい。
(一先ず、ここは無難に揺すって起こそう)
ソファの正面に回ってしゃがみ込み、ゆさゆさと征司郎の身体を揺すってみる。
「おーい征司郎。もう二時間経つよ?」
小声で声を掛けると、毛布の下から小さく唸る声がした。
でも起きる気配はなく、ちょっと身を捩るだけ。
「ねぇ、征司郎?……征くんってばー」
試しに昔の呼び方で呼びながら再度身体を揺すると、漸く征司郎が毛布の下から顔を出した。
眠たそうに数回目を瞬かせる。
「おはよう征くん。起こしに来たよ」
渡「ん…」
眠そうな声を出して腕を伸ばしてくると、またさっきみたいに突然私の身体を引き寄せて、抱き締めてきた。
顔が征司郎の首元に埋まる。
「ねぇ征くん。何でさっきから抱き締めてくるの」
渡「…気まぐれ」
「ふーん」
絶対何か理由があるだろうけど、言いたくないのなら無理に聞くべきでは無いだろう。
そう踏んで特にしつこく言及はしない事にした。
「で、征くん。起こせって言ったからにはこの後何か用事があるんじゃないの」
渡「んー。……ん」
肯定とも否定とも取れるあやふやな返事をして征司郎は腕の力を強めてくる。
いや、そろそろ苦しいわ。
「征くん。征司郎くん。苦しいので離して頂けますか」
渡「無理」
「えぇー…」
仕方ない。征司郎が満足するまで少し待とう。
そう決めた矢先に掛かってくる電話。
タイミングが宜しいことで。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時