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甘いものと忠告 ページ19

結局征司郎が仮眠室に消えた後、何だかんだと征司郎との事とか、ドイツの病院の事とか、色々とみんなから質問攻めに遭ったりした。

でもその騒ぎは、私に患者の引き継ぎデータを渡しに来た藤原師長によって止められた。

それからは順調に片付けを終えて、今漸く休憩が取れている。




 「ひゃっ!?」




疲れた身体をぐっと伸ばしていると、首筋に突然冷たい感覚がして、ビクッと身体が小さく跳ねる。

何事かと思ったら、隣に飲み物の缶を持っている権の字が立っていた。

イタズラが成功した子どもの様な顔をして、缶を差し出してくる。




高「疲れただろう?」


 「コーヒーは嫌だよ」


高「分かってるさ。これはミルクティーだ」




私はそれを有難く受け取ってプルタブを開けると、ぐいっと一気に飲む。

冷たくて甘いミルクティーが喉を通り過ぎた。




 「美味しい…。体に染みるわ」


高「Aは、いつも飲むのはコーヒーなのに疲れた時は必ずミルクティーだな」




権の字は私の隣、自分のデスクに座って、もう一つの手に持っていたコーヒーの缶を開ける。




 「疲れた時は糖分摂取が大事だからね〜」




だから私のデスクの上にある小さなカゴにはキャンディーやらグミやらがいつも入っている。




 「そういえばさ、会った時からずっと疑問だったんだけど。何で権の字ここに居るの?アメリカから帰るとき帝華大に戻るんだって言ってなかった?」


高「人手不足だから、と守屋院長が西崎教授に掛け合ったんだ。それで私が配属された」


 「なるほど。つまりはアイツの手先として潜入したって訳ね」




少し厭味ったらしく言ったら苦い顔をされた。




高「それもあるが、私の本来の目的はスナイプの論文だ。あの論文の完成には治験が必要だった」


 「アイツが理事長になる為の論文がそんなに大事?」


高「違う。私があの論文を完成させたのは教授の為では無く日本の医療の未来の為だ」




分かってる。
あの論文をアイツの為ではなく、自分の信念に基づいて作成した事は分かってる。
小春ちゃんという、どうしても救いたい命があっと事も知っている。

でもね、権の字。
私は貴方のような素敵な医者が、あんな奴の下にいるのは勿体無いと思ってるの。

あんな場所に何時までも縛られるべきじゃ無いと思ってるの。

だから、この言葉をもう一度貴方に贈るわ。




 「帝華大なんかやめときな」




あそこには本当の医者など居ない。

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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時

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