目覚めの時 ページ13
沈んでいる意識の中、身体を揺すられる感覚がして身を捩る。
すると今度は頬を摘まれたのが分かった。
誰だ…私の眠りを妨げてるの…。
無視してそのまま眠り続けようかと思ったけれど、あまりにしつこいから仕方がなく重い瞼を開く。
ぼやける視界の中で見知った顔が此方を覗き込んでいるのが分かった。
頬を摘んでいた手が離れる。
渡「漸くお目覚めかよ」
「……せーしろー……」
渡「…そろそろ起きろよ。カンファ始まる」
また手が伸びてきて、今度は私の頭を撫でた。
その手つきがあんまりにも優しいから思わずソファに腰掛けている征司郎の腰に抱きつく。
毛布に包まった時よりも強く香る煙草と征司郎の匂い。
渡「なに、甘えてんの?それとも寝惚けてんの」
「甘えてるのー」
ぐりぐりと征司郎の腰に埋めた頭を擦り付ければ、頭上から呆れたようなため息が聞こえてくる。
渡「子どもかよ」
それでも、頭を優しく撫でてくれた。
昔から、よく征司郎は私の頭を撫でる。
子供扱いしないでよって思うときもあるけど、この大きな手に触れられると安心するし癒やされるから、文句は口に出さず呑み込んでおく。
少し黙って大人しくしていたら、撫でるのに飽きたのか満足したのか。
征司郎は自身の腰に回っている私の腕を外すと立ち上がった。
渡「もう行くぞ。支度しろ」
手のひらに髪ゴムとバレッタを握らされてしまったから、渋々身体を起こして髪を結ぶ。
その様子を征司郎はじっと見つめていた。
渡「なぁ」
「ん?なぁに?」
私から目を逸らさないまま静かに口を開く。
渡「何で戻ってきたわけ」
いつに無く真剣な瞳。
逸らすことを許さない強い眼差し。
「……何でだろうね」
渡「はぐらかすなよ」
別に、はぐらかしてる訳じゃ無い。
渡「あのまま、ドイツやらアメリカやらに居た方がお前にとっては楽だろ」
『何でわざわざ苦しくなる日本に帰ってきたわけ』
そう、言外に問うているのが分かった。
「何言ってんの。私が向こうに行ったのは勉強の為だよ?で、学びたい事学び終わったからここに帰ってきたの」
大事な幼馴染と、尊敬する教授。
そんな2人が居る場所に。
私は帰って来た。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時