夏への準備 ページ30
「お邪魔しまーす」
今日も、青葉の家で定例会議だ。僕ー伊達凉馬ーたちはここ最近ずっと入り浸っているけど、青葉も青葉のお母さんも嫌な顔ひとつせず歓迎してくれている。ただただ感謝。
今日は特にこれといった話題はないけど、情報交換のために定期的に集まっている。最近は夏の大会の話も出てくるようになってきた。
「ショージはレギュラーだっけ?」
「おう、もちろん。今年は県大会行ける自信アリだな」
「すげえ」
「浦部くんは?吹奏楽の方はどうなの?」
「県大会は通過できるかも。その上は結構厳しいけど」
「お互い頑張ってこうな」
部活の話に花が咲く中、僕と青葉は顔を見合わせて、ため息をついた。
現在、文芸同好会には後輩がいない。それは、僕と青葉が引退した時点で廃部になることを意味する。早く後輩を見つけないと、部に昇格どころか、消滅の可能性もある。でも、生徒会も何かと忙しいから、ちょっと諦めムードになりつつある。
「凉馬はさ、文芸同好会を潰したくない?」
青葉は僕の隣に座って訊いてきた。僕は、どう答えるかかなり迷った。
「どっちかって言ったら、そりゃ潰したくない。でも、現実的に考えたら潰さなきゃいけないのかもしれない。部室が足りてないから、僕らは身を引いた方がいいんじゃないかな」
「そっか…」
青葉は、伏し目がちに頷いた。
「確かに、そうかも。私たちは図書室以外にも生徒会室もあるしね。活動場所には困らないから、いっそ開け渡しちゃおうか」
それは、何だか悲しい。あえてはっきり言わなかったけど、思い入れのある同好会を潰したくはない。矛盾する思いが巡って、パンクしそうだ。
「…だよね、やっぱ嫌だよね。私も。なんか、ごめん」
「いや、別に。これから、どうにかならないか考えてこう」
「だね、思いついたら言おう」
どうにか持ち直して、今日の所は保留にした。
でも、この判断をいつか、具体的に言うと8月中に下さないといけない。あと1ヶ月と少しの間に、究極かつ残酷な選択をすると思うと、頭を抱えたくなる。
みんなの熱い夏に、僕は何をすればいいんだろう、と漠然と思った。
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2021年5月18日 20時