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凱旋 ページ29

鍵を開けてもらって、俺ー東海林隼ーは会議室の中へ入る。雄一が俺の背中をどついて、「ナイス」と言ってきた。
「花笑、大丈夫だったか」
「うん」
福島さんの顔面に傷がないのを確認してから、三浦先輩が福島さんの所へ駆け寄る。
「東海林くん、お疲れ」
青葉先輩にも背中をどつかれる。
「浪越、ナイスファイト」
テンションが低い浪越に声をかけると、すまんと言った後で、やっぱり背中をどついてきた。
「俺のタックル、そんなによかった?」
と訊いてみたら、
「うん、DF通り越してラグビー部みたいだった」
とのこと。確かに俺はサッカー部ではDFだけど、素直に喜べない。
「東海林くん、ケガはないか」
福島さんに確認されたけど、俺は無傷でピンピンしてる。
「はい、俺は大丈夫です」
この通り、とターンしてみせる。
「それより、福島さんは大丈夫ですか」
「俺も大丈夫だ。全員無事だな。よかった」
福島さんは穏やかな表情でそう言った。


結果として、俺たちは勝った。そりゃ、3対1だし当然かもしれないけど、新海はかなり強かった。俺はタックルした後も、殴られそうになるのをギリギリで回避しながら新海の動きを止めようとした。でも、避けるので精いっぱいで、ほとんど先輩たちが押さえた。まだまだだなあ、とちょっと思った。


「ショージ、お疲れ」
中等部に戻ると、真帆と凉馬が生徒会室で待っていた。
「あ、来てたんだ。いらっしゃい」
「どーだった?」
真帆が単刀直入に訊いてくる。
「勝った。先輩がほとんどやってくれたから、俺はそこまで参加してないけど」
凉馬に、俺の制服を渡された。俺は、真帆を追い出してから着替え始める。
「伊達、勇者の腹筋よく見とけ」
「割れてる?」
凉馬と雄一が横でうるさいから、「浪越、ちょっとそいつらシメて」と頼むと、浪越は「お安いご用」と言って2人にチョップをかました。
「ショージ、まだー?」
バカやってると、外から真帆の声がした。
「待って、あと1分」
「60、59、58…」
急いで着替えて、5秒残しで間に合った。毎朝このスピードで着替えれば、あと2分長く寝られることも分かった。
「真帆ー、いいよー」
真帆はジャージから制服に着替えた俺を見て、
「やっぱ制服の方がしっくりくる」
と頷いた。俺は調子に乗って、
「どうよ?カッコいい?」
なんて冗談で訊いてみた。真帆は、
「うん、いいんじゃない」
と返してくれた。雄一には
「ここでそういう話するなよ。姉さんと福島さんで腹いっぱいだから」
と辛辣なコメントをもらった。久しぶりに、バカ話を心の底から笑えたような気がした。

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作品ジャンル:純文学
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2021年5月18日 20時

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