財布に人生変えられた

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「なあ〜、ボーダー入れよ、楽しいぞ」



公平の妹だと証明できれば帰れると思っていたのに、とても面倒なことになってしまった。


今も横で勧誘し続けてくる太刀川さん。非常にウザい。


これから城戸さんにも同じことを言われると思うと気が重いが、勧誘なんて断ればいいんだからね。頑張ろう私。


そう決意した直後、背後から慌ただしい足音が聞こえてきた。



「なんだ？」


「…なんですかね。」



足音の正体はわかっている。とんでもない勢いで走ってくる。逃げたい。



「A！！」



肩で息をしながら私の名前を叫ぶ男。



「……公平」



兄だ。


…会議室で待っていると聞いていたが、何故今目の前にいるのだ。



「近界民に襲われたって？怪我してないか？怖かったよな、すぐに来れなくてごめん。」


「ちょっと、落ち着いて、」



とんでもない勢いで迫ってくる公平。助けを求めようと太刀川さんに目を向けるが、目を見開いて固まってしまっている。


そりゃそうですよね。いきなりこんな取り乱したチームメイト前にしたら驚きますよね。



「大丈夫だよ、怪我もないから。」


「そっか、よかった…」



とりあえず無事なことを伝えて、なんとか公平を落ち着かせる。


…別に、普段からこんな過保護なわけではないんだ。ボーダーのことが絡むと少々感情的になってしまうだけで。



「上の人たちはお前をボーダーに入隊させたがってる。でも断っていいからな。さっき俺からも無理って伝えておいたから。」


「え…そんなこと言って大丈夫なの？」



公平にも立場があるはず。元凶はこいつの忘れ物とは言え、これからの仕事に支障をきたすことがあったら……



「気にすんな。」



私の心中を察したのか、肩に手を置いて微笑みかけてくる。


……でも、これ以上私が何かをしでかしたら彼のボーダーとしての活動に影響が出てしまうかもしれない。


頑張ってる兄の邪魔はしたくない。できるだけ穏便に済ませないと…



「おいお前ら、そろそろ行かないと城戸さんに怒られるぞ。」


「あ、すみません太刀川さん、お待たせしてしまって。」



やっと助け舟を出してくれたか。遅いんだよ太刀川さん。



「いや、気にすんな。出水のシスコンぶりを見るのは楽しい。」


「「シスコンではないです」」



やはり太刀川さんは嫌なやつだ。

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