ぷつり(誘宵 穂邑) ページ45
ぷつり
音を立ててテレビが消える。其の前にいる少女は無機質な目でPCのディスプレイを見つめていた。何かを訴えるように、ただただ見つめていた。彼女の瞳から読み取れるものは何もない。痛む頭を抑えながら、部屋に居座り続けて居た。
輝鞠に休めと言われて三十分、穂邑はずっと自室で座って居た。何もせず、授業にも出ずに。主人である輝鞠に休めと言われたから、理由はそれだけだった。心臓部分に手を当て、静かに目を閉じる。一呼吸ごとに惨めさが吐き出されていくようだった。
「…お嬢様は、偉大なるお方」
ぷつり
音を立てて髪の毛が抜ける。親の仇でも見るような目でそれを見つめる穂邑は、いつもの凛とした姿とはかけ離れて居た。艶やかな銀髪をゴミ箱に捨て、部屋を出る。廊下で騒ぐ生徒たちに目もくれずにある場所に向かう。
いつもより長く感じるその廊下さえも、自分のことを嘲笑っているように見えた。妄想が先走りすぎたか。べっとりと血の付いたナイフを隠すようにポケットの中に入れ、だれにも見られなかったかどうかを確認するためにあたりを見渡した。
「じゃあ、私は?」
ぷつり
音を立てて”何か”が切れる。何かに引き寄せられるように、穂邑はある場所へ向かっていった。よく調べれば判る、穂邑の正体。彼女は只者ではないと、教員も学園長も薄々感づいていた。なら何故ばれなかったのか、其れは輝鞠が彼女を守っていたからである。
彼女の使命は輝鞠を守ることである。奴に何時の間にか輝鞠が守る側になってしまっていた。自分の不甲斐なさには呆れるほどだ。なら今度は自分が守る番。其の為の第一歩に必要なものが、あの場所にあるのだ。其の場所とは、学園の地下。
「私には、存在意義なんて、ない」
呟きと共に、眩い光が溢れる。光が収まる頃には、穂邑はいなくなっていた。そこにあった石像は、ただただ虚空を見つめていた。
4人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
周(プロフ) - 終わりました (2017年1月1日 23時) (レス) id: f9682346d9 (このIDを非表示/違反報告)
周(プロフ) - 更新します (2017年1月1日 17時) (レス) id: f9682346d9 (このIDを非表示/違反報告)
チェス盤(プロフ) - 更新しましたー (2016年12月23日 13時) (レス) id: e293136629 (このIDを非表示/違反報告)
チェス盤(プロフ) - 更新します (2016年12月23日 13時) (レス) id: e293136629 (このIDを非表示/違反報告)
歌菜子 - 終わりました (2016年12月21日 20時) (レス) id: beed06bc94 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ