遅刻(ウィスティアリア&鬼灯) ページ33
四時間目、魔法学。
生徒が課題をこなそうと頑張る姿を片手間に、しかし1人も見逃しなく眺めながら、ウィスティアリアはすっかり自分の世界に入っていた。
「あ」
「どうした、主」
毒々しい紫色の液体が入ったビーカーに、蛍光色が目に痛い緑の液体が入った三角フラスコを傾けていたウィスティアリアが声をあげた。
その声に反応してビーカーからウィスティアリアへと目を移した鬼灯が問いを発する。
何事だと目で問いかけてくる鬼灯を横目で見て、ウィスティアリアは答えた。
「いや…、授業に遅刻してきた子たちどうしよっかなぁ…、と」
「ああ、いたな。そんな奴らも。演技までしてご苦労な事だ」
──演技、ねぇ。そんな事してる子もいたかな。
くつくつと喉の奥で笑う鬼灯を無視し、ウィスティアリアはビーカーを眺めて首をかしげる。ビーカーの中では、混ざり合う2色が奇妙な模様を描いていた。
「うーん…、どうしようかね」
「適当にデストロイドを捕まえて来させればいいんじゃないか? それか反省文を書かせるのは? …いや、後者はベタでつまらんな」
「別に面白味を求めているわけでもないんだからベタでいいでしょうに…。まあ適当に課題でも出しておくかな。それか反省文書かせるか。…いや、このチャンスに採血をしよっかな」
ふふふ…と不気味な笑い声を漏らしたウィスティアリアを呆れたように眺め、ふと目線を下に下ろした鬼灯が目をむいた。
「…おい、主。それは成功してるのか…?」
「んー?」
その言葉にウィスティアリアも目線を手元に向ければ、手に持っていたビーカーの中の液体の色がすっかり変わっていた。しかも、毒々しい紫と目に痛い緑の面影などみじんも見えない透明感のある鮮やかな水色に。
先程までビーカーの中にあった液体とは思えない変化をしたそれは、混ぜる前とは打って変わってとても美しい色をしていた。ただし、表面からぽこぽこと気泡が出ており、その気泡がはじけるごとに苦し気なうめき声が聞こえることを除いては。
「…成功じゃない?」
「…そうか」
数秒の間の後、にっこりと笑ったウィスティアリアと鬼灯の間を、うう…とうめき声が響いていった。
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周(プロフ) - 終わりました (2017年1月1日 23時) (レス) id: f9682346d9 (このIDを非表示/違反報告)
周(プロフ) - 更新します (2017年1月1日 17時) (レス) id: f9682346d9 (このIDを非表示/違反報告)
チェス盤(プロフ) - 更新しましたー (2016年12月23日 13時) (レス) id: e293136629 (このIDを非表示/違反報告)
チェス盤(プロフ) - 更新します (2016年12月23日 13時) (レス) id: e293136629 (このIDを非表示/違反報告)
歌菜子 - 終わりました (2016年12月21日 20時) (レス) id: beed06bc94 (このIDを非表示/違反報告)
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