三つの選択 ページ3
僕は寝袋の脇にあった灯油を空になるまでふりかけて、
用意されてあったマッチを擦って灯油へ放った。
ぼっ、という音がして、寝袋はたちまち炎に包まれたよ。
僕は客船の前に立ち、模型をぼうっと眺めながら、鍵が開くのを待った。
2分くらい経った時かな。
もう時間感覚なんかはなかったけど、人の死ぬ時間だからね。たぶん2分くらいだろう。
かちゃ、という音がして、次のドアが開いた。
左手の方がどうなっているのか、確認はしなかったし、したくなかった。
次の部屋に入ると、今度は右手に地球儀があり、左手にはまた寝袋があった。
僕は足早に紙切れを拾うと、そこにはこう書かれてあった。
【3つ与えます。ひとつ。右手の地球儀を壊すこと。ふたつ。左手の寝袋を撃ち抜くこと。みっつ。あなたが死ぬこと。ひとつめを選べば、出口に近付きます。あなたと左手の人は開放され、その代わり世界のどこかに核が落ちます。ふたつめを選べば、出口に近付きます。その代わり左手の人の道は終わりです。みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、あなたの道は終わりです】
思考や感情は、もはや完全に麻痺していた。
僕は半ば機械的に、寝袋脇の拳銃を拾い撃鉄を起こすと、
すぐさま人差し指に力を込めた。
ぱん、と乾いた音がした。ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん。
初めて扱った拳銃は、コンビニで買い物をするよりも手軽だったよ
ドアに向かうと、鍵は既に開いていた。
何発目で寝袋が死んだのかは知りたくもなかった。
最後の部屋は何もない部屋だった。
思わず僕は「えっ」と声を洩らしたけど、
ここは出口なのかもしれないと思うと少し安堵した。
やっと出られる。そう思ってね。
すると、再び頭の上から声が聞こえた。
【最後の問い。3人の人間とそれを除いた全世界の人間。そして、君。殺すとしたら、何を選ぶ】
僕は何も考えることなく、黙って今来た道を指差した。
するとまた、頭の上から声がした。
【おめでとう。君は矛盾なく道を選ぶことができた。人生とは選択の連続であり、匿名の幸福の裏には匿名の不幸があり、匿名の生のために匿名の死がある。ひとつの命は地球よりも重くない。君はそれを証明した。しかし、それは決して、命の重さを否定することではない。最後に、ひとつひとつの命がどれだけ重いのかを感じてもらう。出口は開いた。おめでとう。おめでとう】
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aoiro(プロフ) - kirohaさん» ありがと (2021年1月6日 0時) (レス) id: 832b7f5fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kiroha(プロフ) - 怖い話は、好きだから楽しかった (2021年1月6日 0時) (レス) id: 41ac27f160 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoiro | 作成日時:2021年1月5日 21時