３カラット ページ8
…
着替えてくるね、と言ったくせに、その日あいつは
来なかった。
＿＿ゴンゴンゴンゴン＿＿ゴンゴンゴンゴン、！
あまりの蒸し暑さに、布団を蹴り上げ、重い身体を
起こす。まだ夢か現実か曖昧な頭をぐりぐり振ると、
ベランダの外からガラスを叩いている男の立ち姿に
一気に目が覚めた。
「……ドアから来いよ…」
「だってこっちのほうが近いじゃん」
昨日とは打って変わって涼しそうな格好だ。
白い薄手のシャツに薔薇の刺繍、同じ素材のズボン、
パッとみ派手な取り合わせを、違和感なく着ている。
「てか、着替えに何時間かかってんだよ…」
「だって、シャワー浴びてすっきりしたら
眠くなっちゃったんだもん」
ベッドに腰かけ、つい頭を掻いた。
まずは発声を教えようと思っていたけど、やっぱり
大人の常識が先か。
男は、勝手に冷蔵庫を開けてアイスを物色している。
「お前さぁ……」
「ひかる」
「あ？」
「ひかるって呼んでいいよ」
ん、半分こ。
男は、じゃなくてひかるは、コーヒー味のパピコを
半分にちぎって俺によこした。
「それ俺のなんだけど…」
「こっちは監督って呼ぶ？しょれか、やふほか…」
「咥えながらしゃべんな」
口からぶら下がっていたそれをビッ、と取りあげた。
ひかるはイタズラっ子みたいにくつくつ、と笑って、
「やぶにしよ。なんか響きが好き」
そう言って俺の分のパピコをしれっと持っていって
しまった。
俺の手元に残ったパピコは、ひかるの食べかけ＿＿。
「アイス食べたら練習？」
ベッドに座って、ひかるはパピコをにぎにぎしつつ
首をかしげた。
余計なことばかり浮かんできそうな頭を冷やそうと
ぐびぐび溶けたアイスを飲み込み、隣に腰をおろす。
「……まずは形から入ろう」
「かたち？」
＿＿ピンポーン、！
「来た来た」
うちの劇団のヘアメイクを電話で呼んでおいたのだ。
ベランダにレインボー柄のレジャーシートを広げて、
ひかるの鬱蒼とした髪を小気味よくカットしていく。
硝子玉みたいなひかるの瞳に、やっと青空が映った。
「なんか栗みたい…」
「…たしかに。でもまぁすぐ伸びるだろ」
手鏡に夢中なひかるは置いておいて、ヘアメイクを
玄関まで送った。
優しさ半分、ひかるを見た感想を聞きたいのが半分。
「な、いいだろあいつ？」
「まぁ、、顔は綺麗だけど…」
「だけど何だよ」
ヘアメイクはばつが悪そうに、声を潜めて言うのだ。
「ちょっと舌ったらず過ぎない？」
「あぁ……そんなん練習したらすぐ直るって」
…
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しょこる(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます★ダイヤモンドのように硬くて誰にも壊せない絆を描けて満足です^^次のステージにすすんだ２人に幸あれ☆彡 (2020年6月17日 17時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 完結、おめでとうございます。キュンキュン、ハラハラ、不器用な2人のキラキラ光る恋に魅了されました。ダイヤモンドにも負けない輝きを放つ２人の人生に全力で拍手を送ります！素敵なお話をありがとうございました。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» ダイヤモンドは綺麗なだけじゃなくて、外から簡単に傷つけることができない硬さも魅力ですからね＊残り数ページ、ふたりのキラキラの行方を見届けてください(-人-) (2020年4月28日 14時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - か弱そうに見えて、その実ダイヤモンドのように硬質な輝きを放つひかちゃんに心奪われます。どうかこの二人がきらめく舞台を続けていけますように…！！ (2020年4月5日 20時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - きょーかさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます＊お話も佳境に入ってきたのでどんどん書き進めていきます^^ (2020年3月26日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年7月27日 22時
