＊ ページ48
…
ごちゃごちゃした感情がひゅうっ、と奪われるような
感覚にどきりとした。
俺は今怒るべきでも、笑うべきでもなくて、ただただ
ひかるに恋焦がれるべきなのだ。
しのごの言わず。馬鹿みたいに。
「……会いたかった」
「おれもっ！」
胸に飛び込んできたひかるを、それなりに受け止めた。
顔をあげたひかるの笑顔は、雨上がりの青空みたいに
まぶしい。
「スタッフさんにこないだの独り芝居が観たいって
頼まれてね、おれ長野のホテルでやったんだ。
狭い談話室で10人くらいしか見てなかったけど……
すっっごく楽しかった」
子供みたいに自慢してくるひかるに、胸がすくような
気がした。
ひかるにとってカラットの思い出は、ちゃんと思い出
なのだ。
俺にとってひかるがいた頃のカラットは、まるで目を
覚ます直前までみていた夢みたいなのに。
「よく台詞覚えてたな…」
「覚えてたんじゃないよ。忘れられないだけ」
ひかるにまた、どきりとさせられる。
煙草にするみたいに靴底で踏んで消したつもりだった、
でも消しきれなかったちいさな火が、ゆらゆら揺れて。
「やっぱりおれ、、やぶの舞台に立ちたい」
ひかるの瞳はちゃんと燃えていて、揺らいでもなくて、
目を背けたいのに、それもできない。
俺もひかるみたいに純粋で自分勝手な子供になれたら
いいのに。
「わがまま言うなよ、、俺だって暇じゃないんだ」
「……やぶは売れっ子だもんね」
あからさまにしょんぼり、うなだれたひかるにかける
言葉がなかった。
口を開いたら、待ってたよって、言ってしまいそうで。
遅いんだよって、抱き締めてしまいそうで。
もう一度、ひかると芝居ができるかもしれない。
そんな期待が、袋に閉じ込めた蛍みたいに光っている。
「でも書いて。お金なら払う」
ひかるはぴしゃり、と言い切り、口を一文字に結んだ。
イエス以外はお断り。そういう顔で。
「１年に１本…５年に１本でも待つから…
おれのために書いて」
ひかるがあわててポケットから引っ張り出した財布を
金で買えると思うなよ、って片手で黙って押し返した。
出会った日の俺にも、今ならそう言える。
" けーやく金は？"
ほんとうに、欲しいと思うなら。
「……契約金は？」
心まで全部、渡さなきゃだめだ。
「好きなだけ持ってって…」
薄くほほ笑み、目を閉じて、かかとをあげたひかるに
ありったけのキスをした。
次はチャイムを鳴らして、玄関から入って来いよって、
あまりに普通な台詞を思い浮かべながら。
…
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しょこる(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます★ダイヤモンドのように硬くて誰にも壊せない絆を描けて満足です^^次のステージにすすんだ２人に幸あれ☆彡 (2020年6月17日 17時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 完結、おめでとうございます。キュンキュン、ハラハラ、不器用な2人のキラキラ光る恋に魅了されました。ダイヤモンドにも負けない輝きを放つ２人の人生に全力で拍手を送ります！素敵なお話をありがとうございました。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» ダイヤモンドは綺麗なだけじゃなくて、外から簡単に傷つけることができない硬さも魅力ですからね＊残り数ページ、ふたりのキラキラの行方を見届けてください(-人-) (2020年4月28日 14時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - か弱そうに見えて、その実ダイヤモンドのように硬質な輝きを放つひかちゃんに心奪われます。どうかこの二人がきらめく舞台を続けていけますように…！！ (2020年4月5日 20時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - きょーかさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます＊お話も佳境に入ってきたのでどんどん書き進めていきます^^ (2020年3月26日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年7月27日 22時
