＊ ページ26
…
とにかく引き離そうとおそるおそる涼介の肩に触れて、
やっぱり痩せたなって、ほろり、と口走りそうになる。
俺の友情が片思いだったことが、なぜだか急に切ない。
ガチャンッ…。
閉まっているはずのドアが閉まる音に背中を叩かれて
ハッと我に返った。
潮のように満ちてくる嫌な予感に、喉が一気に渇いて
へばりつく。
「……ひかるっ…」
廊下は水を打ったように静かで、俺を待っているはず
のひかるはいなかった。
階段を駆け下りるヒステリックな靴音だけが、薄暗い
踊り場の下から響いてくる。
「っ、薮ちゃんっ！！」
後ろ髪を強く引かれて、ひかるを追いかけようとした
足が動かなくなった。旧友は半泣き、恋人は逃亡。
俺の選択がことごとく、波風の立つ方へ転がっていく。
「……」
開いたままの台本がドアの前に落ちていた。
大事に拾い上げ、パラパラとめくって、脚本の解釈や
俺のアドバイスがびっしり書き込まれたト書きを指で
なぞる。
本当は自分に自信がなくて、欠けた部分を埋めようと
必死で、真っ赤になった台本がいじらしく胸に迫った。
気まぐれで、がんばり屋で、ドラマチックなことしか
起こらない船＿＿。
”やぶにほめられた”
”うれしい”
ひときわ目立つ、蛍光ピンクのメモ書きを指でなぞり
台本を閉じた。
開けた視界の真ん中に、青春を共にした旧友が、涙を
こらえて立っている。
ドアはぴったり、と閉め切ってしまうほうが楽なのだ。
「……涼介、実は俺な、、」
…
――ピンポーーン…。
ひかるの部屋の呼び鈴を押したのは、他ならぬ俺だった。
こんなに弱弱しい音だったかなって、白黒の記憶が歪む。
「ひかるー…」
耳を澄まし、居留守だと確信したのはただの勘というか
希望的観測で、なんて声をかけるか考えながらふらふら
自分の部屋に戻った。
ベランダに出て、隣同士くっついた手すりを乗り越える。
ひかるは毎日こうして俺の元に来てたんだな、とか
見たこともない記憶はやけに色鮮やかなのに、ガラスの
向こうでベッドに潜り込むひかるの姿はやっぱり白黒だ。
カララララララ…。
ガラス戸の鍵は開いていた。ひかるは何かあったときの
ためだって言ってた。何かってなんだよって思っていた。
その答えが俺とひかるの痴話喧嘩になるなんて、皮肉な
もんだ。
「……ひかる、入るぞ」
布団を頭までこっぽりかぶったひかるは、まるで溶けた
かまくらみたいにぺしゃん、と潰れている。
すぐそばに腰をおろし、肩らしき部分にやんわり触れた。
…
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しょこる(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございます★ダイヤモンドのように硬くて誰にも壊せない絆を描けて満足です^^次のステージにすすんだ２人に幸あれ☆彡 (2020年6月17日 17時) (
レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 完結、おめでとうございます。キュンキュン、ハラハラ、不器用な2人のキラキラ光る恋に魅了されました。ダイヤモンドにも負けない輝きを放つ２人の人生に全力で拍手を送ります！素敵なお話をありがとうございました。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - しろくまさん» ダイヤモンドは綺麗なだけじゃなくて、外から簡単に傷つけることができない硬さも魅力ですからね＊残り数ページ、ふたりのキラキラの行方を見届けてください(-人-) (2020年4月28日 14時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - か弱そうに見えて、その実ダイヤモンドのように硬質な輝きを放つひかちゃんに心奪われます。どうかこの二人がきらめく舞台を続けていけますように…！！ (2020年4月5日 20時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しょこる(プロフ) - きょーかさん» こちらこそいつもコメントありがとうございます＊お話も佳境に入ってきたのでどんどん書き進めていきます^^ (2020年3月26日 18時) (レス) id: 93d8c8f749 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しょこる
| 作成日時：2019年7月27日 22時
