「夕方、回顧」 ページ25
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夕方5時。俺はもう家に帰ってきていた。
10時過ぎに起きて学校に着いたのは12時前。
一応統計ソフトで調べ物をしたけど、パソコンに向かってたその数時間だって研究のことより今日の夕食は何を食べるかとか、今借りてる映画を観終わったら次はどんなのを借りようかとか、髪の毛はいつ染め直そうかとか、そんなどうでもいいことを考えている時間のほうが長かった。
結局形ばかり研究をしてたのは3時間足らずで、スーパーに寄って家に帰ってきて、今は観途中だった映画を観ている。
ベランダへ繋がる窓から、西陽が部屋に差し込む。
橙みたいな黄色みたいな光が窓枠の影だけつくって部屋の中に伸びていた。
何をしてんねやろうって、よく思う。
院生と称すれば聞こえはいいけど、正直今の俺の生活はすねかじりの堕落したフリーターと変わらない。
好きなときに好きなことをする、まるで怠惰な生活。
それだけではなく、自分の好きなもの以外のすべてにおいてひねくれた考え方を持っていることは自分でも自覚してるし、何かあるたびにかならず心の中で思うのは「メンドくさい」「しんどい」「どうでもええ」のうちのどれかで。
そういうの、わかってはいるけど、だからと言って親の金――親、というか、あのひとの金――で生活するのはやめて自立することや、院生として研究にすべての熱を費すこと、ちゃんとした就活を始めることのような、今の自分をすこしでも改善できることをしようとはすこしも思えない。
映画を一時停止し立ち上がり、ベランダへ出る。
空気が澄んでいてつめたい。暖房で火照った体には心地がいい空気だった。
ポケットから煙草とライターを出し、建物の後ろに落ちていく太陽を眺める。
まあ、でも。
積極的に自炊もするし、部屋はいつも片付いてるし、本も読むし、一応バイトもしとるし、あのひとの頼みはいつだってちゃんと聞いたってるんやから、引きこもりのニートよりはマシやろ。
なんて、自分に都合ように考えるが俺は得意や。
それから自然と先週の金曜のこと――だから、もう五日前のこと――を思い出していた。煙草を吸いながら。
あの子はあの後、どうしてるんやろうかって。
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蒼 夢見子(プロフ) - 幸さん» 幸様、心のこもったあたたかいお言葉ありがとうございます。こんなこと言っていただけるとすこし自惚れてしまいそうだなと思ってしまうほど本当にうれしいです。お礼を言いたいのはこちらのほうです…私は幸さんのコメントにあたたかい気持ちになりました^^ (2019年11月26日 19時) (レス) id: c01abe0da9 (このIDを非表示/違反報告)
幸 - 夢見子さんの作品は、何でこんなに引き込まれるんだろう…と、日々不思議に思っています。(笑) ものすごく好きな作者さんです。暖かい気持ちにさせてくれて、ありがとう。私も、夢見子さんのように、誰かを暖かい気持ちにさせられる人になりたいです。 (2019年11月21日 20時) (レス) id: 295a9fdbac (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 碧さん» 碧様、初めまして。お返事遅くなりすみません(涙)そう言っていただけてとてもとても嬉しいです。思うように書けずにいて読んでくださっている皆さんには申し訳ない気持ちですが…あたたかいコメントを糧に頑張ろうと思います!ありがとうございます! (2019年4月7日 0時) (レス) id: 0c7f8e1b68 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 初めまして。すごく楽しみに読ませて頂いています。夢見子さんの作品はいつも切なくて温かいものばかりで、大好きです!応援しています。 (2019年4月2日 18時) (レス) id: d6c70f3491 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 翠穂さん» 翠穂様、お返事大変遅れてしまってごめんなさい…!そしてあたたかいコメントありがとうございます(涙)すこしずつしか更新ができていませんが今後の展開も見守っていただけるとうれしいです! (2019年3月25日 12時) (レス) id: 742d92b89e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2019年1月30日 0時