38 過保護 ページ38
ゆっくりとスピードを上げていく車は、すぐに２次会に向かう同僚たちの横を通り過ぎた。
その瞬間、ドキッとする。
櫻井さんと、目が合った気がした。
まさか、ずっと見ていた？
ゆっくり後ろを振り返るとだんだん遠くなっていくあの人は、真っ直ぐ顔を上げていて、やっぱりこちらを見ている気がした。
「お兄・・・」
「んー？ 何、具合悪い？」
「ううん。そんなに飲んでない。そうじゃなくて」
口に出してしまうのが怖かった。
お兄はなんだかんだいって私に甘くて、嫌な事から逃げるのを許してくれる。
それは、私が自分の目の事で傷ついてきたのを間近で見ていたからだと思うけど。
口にしてしまえば、自分の逃げ道を作ってしまう気がして。
自分の弱さを認めてしまう気がして。
「なんかあった？」
言い淀んでいると、さすが一緒に育っただけあっていつも違う私にすぐ気付かれる。
こうなると問題が解決するまで最大限に過保護を発揮し、どこに行くにも送り迎えをしたりと鬱陶しいことこの上なくなる。
高校生の時その状態に陥って、当時社会人１年生の兄が彼女と別れたこともあった。
家まで押しかけた彼女が『妹と私、どっちが大事なのよ！』叫び、ケロッと『妹だけど』と言ったのは兄なのに、睨みつけられたのは私。
そんな彼女に「家族と彼女比べるような女、バカすぎて付き合えるわけないね」フンッとお怒り気味に言い、その場で「もう別れてね。バイバイ」と冷酷に突き放していた。
まあ、今となっては次元が違う大切さを理解できない相手と付き合えないという考えは理解できるけれども。
・・・じゃなくて。
やっぱり、言わないとダメだよね。
はぁ、と溜め息をつき、諦めて口を開いた。
「目、気付かれた」
「噂になってんの」
「ううん。誰にも言ってないみたいだけど、知ってるっぽい事言われた」
「え？ 脅されてるとか？」
「そんな事はないけど・・。
なんか、本当なのか確かめたいっぽい感じかな。
何を考えてるのか分からなくて、ヤな感じ・・・」
「・・・何かあったらすぐ言えよ？」
「お兄、忙しいでしょ」
「仕事の合間に妹の相談に乗れないほど無能じゃないから」
こうして迎えにも来てるくらいだし？
と笑う兄は私同じく仕事用のスーツを着ていて、襟には金のバッジが光っている。
私を送った後にまた仕事に出ていたのだろう。
それなのに飲み会終わりの妹の迎えするとか、本当、過保護なんだから・・・。
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←37 おむかえ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1902人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とも(プロフ) - こんにちは。赤い眼の真相？とっても気になります。ってか続きがめちゃくちゃ読みたいです( ^_^ ;) (2020年1月25日 13時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
seiran(プロフ) - みやさん» みやさん、こんにちは。大変お待たせしましたm(__)mたったの１話ですが更新いたしました。この後はもう少し更新頻度は上がるかも。お時間ある時にお付き合いいただけたら嬉しいです(^^) (2018年5月12日 13時) (レス) id: 97bddcb896 (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 待ってます (2018年4月14日 10時) (レス) id: 31283dda21 (このIDを非表示/違反報告)
seiran(プロフ) - みぃこさん» みぃこさん、こんばんは(^^)先程、すくない話数ですが更新してきました！もう少しコンスタントに進めるのが理想なんですけど、なかなか時間が取れません（T_T） (2018年2月26日 23時) (レス) id: 97bddcb896 (このIDを非表示/違反報告)
みぃこ(プロフ) - おはようございます☆これからの更新楽しみにしてます(*^^*) (2018年2月14日 9時) (レス) id: 22f30ee0ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：青藍
作成日時：2018年1月10日 23時
