頬の雨ーfkrー ページ7
ぽつりぽつりと時折窓まで届いてくる雨をじっと見つめながら、私はぼんやりと考えをめぐらせた。
どんなタイミングで、どう切り出して、どう言おうか。
時計の針がてっぺんを回っても未だに帰ってこない人を思いながら、考える。
この状況は、私にとっては寂しくも嬉しい状況で、彼が忙しいということは、それだけ彼らが認められているということ。
その中でも彼は色々取り仕切ることが多いから帰りが遅いこともよくある。
突然、玄関がガチャりと開いて、待っていたその人が帰ってきた。
「ただいま。まだ起きてたんだ。遅くなるから寝てていいって言ったのに。」
そう言って彼は私の頭をそっと撫でる。
「……ねぇ。」
私は雨を見つめながら声を出した。
「ん?」
「私たち、別れよっか。」
視界が滲んで、私の頬にも雨が降る。
「えっ?待って待って……え?なん、で?」
それまで考えていたことをぶち壊すように、私は淡々と言葉を紡いでいく。
「なんかねー、なんとなく疲れちゃって。」
言葉にして初めて自分でも疲れていたのだと認識できた。
「それは、なんで?」
彼が私の隣に座る。
けれど、私の目は雨に釘付けだ。
「私、けんくんの隣を自信持って歩けるようにって、ずっと努力してきた。」
「そうだったの?」
初めて言う事実に驚いている彼。
私は少し、頷いた。
「でもね、最近、頑張っても頑張ってもどこか後ろめたくなっちゃうんだ。私が隣でいいのかなって、不安になるんだ。」
そうして、気づけば私は疲れてしまったんだ。
福良拳の彼女、というポジションに堂々と立っていられなくなってしまったんだ。
92人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時