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カフェオレで多少機嫌は直したらしいけど、それでもほとんどこっちを見てくれないA。
まぁでも、関係ないけどね。
今向かってるのは綺麗な景色が見える場所。
でも、ある仕掛けをしてある。
「ついた。A、こっち見て、景色綺麗だよ。」
この場所は少し大きめの川の対岸に綺麗な景色が広がっている場所。
道路の端に停車して見る景色だから、走ってくる方向によって運転席側を見ないと見れないのだ。
ぱっとこっちを向いて景色を楽しむAが俺と目を合わせる。
「ね、少し話そうか。」
日が沈むと気温もぐっと下がるから車の中で、だけどね。
「……分かった。」
「良かった。じゃあさ、まずはなんで俺が他の女の子と付き合ったと思ったの?」
女の人、じゃなくて女の子ってことはだいぶ幼い頃の話みたいだし、たぶんそれがAが俺を嫌いになったきっかけだ。
「私が小2の時、拳が全然迎えに来ないから教室に行ったんだ。その時、拳は女の子に告白されてて、何言ってたかは覚えてないんだけど、その女の子に拳が良いよって言ってたのだけは覚えてて。」
薄らとだけど、覚えてる。
確かに俺は女の子に良いよって言った、けど。
「それ、誤解だよ。」
「何が?良いよって言ったことが?」
「ううん、女の子に告白されてたってところが。あの時、確か修学旅行前で、その女の子が好きだった人に告白する時に協力してほしいって言われて良いよって言ったんだと思う。」
「……拳にじゃなくて、他の人への告白の手伝い?」
「そうだよ。」
Aは驚いたような、申し訳なさそうな顔をして俯く。
「他に何か、俺に彼女の気配あった?」
「無かった……。」
良かった。これで誤解は解けた。
でも、Aがそれだけで俺をあそこまで嫌うとは思えない。
「でも、あれは?」
やっぱり。他にも誤解があったんだ。
「あれって?」
「拳が先に嫌いって言ってきたんだよ?」
「え、いつ?」
「私が小学生で、拳が中学生の時。」
必死に記憶を辿って、ヒットした。
「っ……確かに、言ったね。ごめん。」
あの時、俺は思春期特有の悩みとかを抱えていて、その上受験勉強で忙しくて、その中でAを遠ざけたくて嫌いだと言った。
同居し始めて俺にはっきり「嫌い」だと言うようになったAに合わせて俺も「嫌い」だと言ってたけど……始まりは、俺だったんだ。
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時