退屈な日々に【9K】

始まる幸劇 ページ47

俺、何したんだろ。

気づいた時にはAに嫌われていた。

何がきっかけなんてこっちが聞きたい。


小学校を卒業するまでは仲が良かったはずだ。

俺が中学に上がった頃に少し距離が離れたけど、ただの倦怠期だと思ってた。

それが高校に上がり、Aが小学生から中学生になった頃には、完全に嫌われていた。


俺も、Aのことを婚約者だと刷り込まれているからそう思っていたけど、同級生の女子にも魅力に感じていたことは否定できない。

でも、告白はすべて断ったし、記憶にある限り誰かと付き合ったことなんてない。

それは俺が地元を離れて東京に来てからだってそうだ。


『拳が、私以外の女の子と付き合ってたから。』


あの言葉はどういう事なんだろう。

俺が忘れてるだけ？いや、そんな事ない。

むしろ、どちらかと言えば俺は上京してからAの周りを変な虫が飛ばないか注意していたくらいだ。


これは、多分Aが何かを誤解してるんだ。

さっき出ていく時のAは、泣きそうな顔をしていた。本人に自覚は無いんだろうけど。

ずっと一緒にいるだけで、積極的にお互いのことを知ろうとはしてこなかったけど……あと半年すればAも社会人、そろそろ次のステップに進むべきかな。


福良帰ってくる時、連絡して。

福良絶対だよ。


俺に当たりが強かったとしても、Aは優しいからこう言えばちゃんと連絡してくることは計算済み。

さて、Aはきっと夜にしか帰ってこないからそれまでに準備を済ませておこう。


久々、って程じゃないけどAと暮らし始めてからはほとんど無くなった家でのコンビニご飯。

Aは俺が嫌いだと残すって分かってるから、辛うじて食べられる野菜か、新しい味付けのものを1口サイズしか出さない。

何故かお弁当だとがっつり入ってて俺は嫌々食べるかそばに居た誰かにあげてるんだけど。

バイブが鳴って、Aからの返事が来る。


A今日は帰らない。


あれ、でも明日平日だよね……。


福良学校は?

A明日は休み。


なるほどな。あーー、どうしよう。計画ちょっと変えないとな。



次の日の夕方、空が赤く染った頃にようやく帰ると連絡が来た。


福良迎え行くよ、どこ?

Aいらない。


迎えを断られるのは想定内だけど、やっぱりほんの少しだけ傷つくよね。

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