高い景色ーwtnbー ページ40
私は、高いところ、特に下の景色が見えるところが嫌いだ。
それは高所恐怖症などではなく、高いところから下を見下ろすと、つい考えてしまうのだ。
"ここから落ちたらどうなるんだろう"と。
もちろん自〇願望なんてないし、飛び降りる気だってない。ただ、毎度毎度よぎるその考えに嫌気がさすのだ。
なんで突然こんな話してるかって?
それは今その状況に誘われてるからだ。
「A、おいでって!綺麗だよ!」
「ここからでも見えるからいいよ。」
夏真っ盛りの夜空。大きな音と共に咲く花火はとても綺麗だ。
しかしそれはリビングのソファからでも十分に見えるので、彼が誘うようにわざわざベランダに行く必要は無い。
「いいから、ね、早く!」
痺れを切らした彼に腕を引かれて外に出る。
なんだかんだ言いつつも、花火が上がっている間は2人で肩を寄せあって眺めていた。
全て打ち終わったのか、巨大な花火の後、数分経ってももう花火が上がることは無かった。
そのことに気づいた私は、思わず下を見てしまった。
高くはないが低くもないこのベランダ。
私はやはり、ふと考える。
ここから飛び降りたらどうなるんだろう。
その瞬間、ガシッと腕を掴まれる。
私は下から視線を逸らし、こうちゃんの方をむく。
「こうちゃん?」
さっきとは打って変わって泣きそうな顔をしている彼に、私は戸惑うしかない。
「A、お願いだから、それだけは絶対にやめて。」
私の考えを見透かしたかのように言ったその表情は真剣そのもので、私は頷くしかない。
すると、ホッとしたように息を吐き出し、そのまま私の手を取って中に入った。
ソファに座り、ギュッと抱きしめられる。
「ごめん。俺が無理やり連れ出したりしたからだよね。もう二度としないから。だから、居なくなったりしないで。」
顔は見えないけれど、声から彼が泣いていることが分かった。
私は恐る恐る彼を抱きしめ返す。
「大丈夫だよ。こうちゃんのせいじゃない。それに、居なくなったりしないよ。」
ほとんど無意識に考えてしまうことだから、いつか無意識に飛び降りてしまうかもしれない。
でもその時は、きっとその前に貴方が引き止めてくれるよね。
今まで嫌気がさしていた考えだけれど、少しだけ嫌いさが緩和された気がした。
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こうちゃんさん書いてなかったですよね?
もし同じ話書いてたらコメントで教えてください。
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時