右手の指輪ーiniー ページ39
僕の好きな人には恋人がいる……多分。
その証拠に、彼女の右手薬指にはいつも指輪が嵌められている。
直接聞いたことは無いが、かなり初期からいて彼自身も指輪をしていたこうちゃんならぬ渡辺さんに聞いたところ、彼女の好きな人の指輪らしい。
好きな人の指輪ってことはまぁ、そういう事だよねぇ。
好きにさせる自信も、奪える自信もない俺はせいぜい彼女の幸せを願うしか無かった。
そんなある日の飲み会で、俺は彼女の指から指輪が消えていることに気づいた。
あれ？でもさっきまで嵌めてたよね？
｢Aさん、いつもしてる指輪はどうしたんですか？｣
｢え？あぁ、バッグの中。お酒の席では念の為いつも外すようにしてるの。｣
そう言って彼女はいつも指輪が嵌っている辺りをするりと撫でた。
直接聞くなら今しかない、と俺はお酒の力も借りて聞いてみた。
｢Aさん、あの指輪ってペアリングか何かですか？｣
彼女は驚いた顔をして、苦々しく笑った。
｢だといいんだけどねぇ。多分無理だろなぁ｡ライブでも動画でも指輪してるの見たことないし。｣
…………………………は？
｢え、ライブとか動画ってどういうことですか？｣
そこで彼女はなにかに気づいたのか、あははと笑いだした。
｢あれ、ただのグッズだよ。ライブグッズ。｣
彼女はカバンの中から指輪を取り出して、よく見せてくれた。
｢ここね、私の好きな人の推しマークになってるの。素敵でしょ？｣
あまり近くでまじまじと見たことは無かったが、確かに一般的に市販されている指輪には付いてないようなマークが彫られている。
そして、それがさり気ないものだから、パッと見グッズなんて思わないし普通にお洒落だ。
｢そうですね。……え、じゃあAさんって恋人って居ないんですか？｣
｢いないいない。たまに人恋しくはなるけど、そんな時はほら、推しがいるから。｣
とどのつまり、俺は盛大な勘違いをしていたということか。
いや、彼女には想い人がいるのは確かだが、口ぶりから察するにガチ恋ではないようだ。
じゃあその人恋しさ、俺が埋めますよ。
そんな告白まがいの言葉は、小さくて誰にも届かなかった。
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (
レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました！fkrさんが詰め寄る感じいいですね！続編？半年後fkrさんとどうなっているのか気になります！ (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは！そういって頂けてとても嬉しいです！最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは！結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました！続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ！気に入っていただけて良かったです！！ (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：辰海恋歌 | 作成日時：2021年5月19日 16時
