退屈な日々に【9K】

最後のチャンスーizwー ページ31

告白した時、心臓の音で世界が支配されたかのようだった。

その中で、貴方の少し恥ずかしそうな声だけが私に喜びを届けてくれたんだ。

それからお互いに忙しさがありつつも時間が合う限り幸せな時間を過ごして、笑いあった。

……そんな時間が、ずっと続くと思ってたのに。


いつからか、すれ違って、連絡が取れないことが増えた。

そんな折、外出さえままならない情勢になってしまった。

私と彼はそれぞれで暮らしていて、彼は忙しく、人前に出る仕事をしている。

それを分かった上で、会いたいなんて口が裂けても言えなかった。

気づけば、1週間連絡を取ることさえしていなかった。

なにか送ってしまうとわがままを口走ってしまいそうで、怖かったのだ。

それでも、と勇気を振り絞り一言だけ送る。


A元気にしてる?


彼の返事がすぐ来ないことなんて分かってるから、気にしないでいいように非表示にする。


ドキドキソワソワしながら過ごすこと数時間。

彼からの返事は『うん』の一言。

淡白を通り越して無機質なその一言を見た瞬間、ぷつん、と私の中で何かが切れる音がした。


Aそれは良かった。

A話したいことがあるから、近々会えないかな?


あれほど躊躇っていた"会いたい"も、すんなりと送ることが出来た。

今度はすぐに返信が来た。


伊沢拓司いいよ。明日の夜はどう?

A分かった。そっち行っていい?

伊沢拓司いいよ


今まで忘れていた心臓の音が戻ってくる。

それと一緒に、一筋の涙が頬を伝った。

＿＿＿＿→←＿＿＿＿

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す