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久しぶりの全力疾走にすぐに身体が悲鳴を上げるけど、そんなことに構ってられない。
「河村!」
言われた通りの公園にたどり着き河村の名前を呼ぶと、彼は誰かの腕を掴んで揉めていた。
「あ、良かった。ほら、いい加減観念しなよ。」
俺に気づいた河村はその女性……Aに向かってそう言った。
「A……?」
「けん、くん……ごめん。」
彼女は諦めたのか、それ以上抵抗することは無かった。
けれど、俺と目が合った瞬間ばっと顔を逸らした。
それに、少なからず心臓が痛む。
「河村、ありがとう。こっからは2人で話すよ。」
「ん。」
河村はそれ以上何も言うことなくその場を立ち去っていった。
「とりあえず、あそこに座って話さない?」
俺は、ひとまず話し合いの場を設けるため、彼女をベンチに座るよう誘う。
「ごめん。これ、返そうと思っただけだから。」
彼女は俺の方に腕だけ突き出して、指輪を差し出した。
それは、彼女がいつも付けているネックレスに通しているもので、俺も同じように指輪をネックレスに通しているが、いつもはカバンの中に保管してある。
「……受け取れない。」
俺は彼女のそれに触れようとすらしなかった。
「なんで。」
彼女は顔を逸らしたまま聞いてくる。
そんなこと、Aが1番わかってるでしょ。
「……話し合いをしてから。もし受け取るとしても、話し合いの後だよ。」
本当はもっときつい言い方も出来たかもしれないけれど、そうしてしまうと話し合いすらできない気がしたたから。
彼女は諦めて、ベンチに座った。
俺も隣に座る。
「まずさ、なんで何も言わずに出ていったの?」
「……ごめん。」
「ごめんじゃわかんないよ。」
彼女はずっと謝っている。
メモでも、言葉でも。
俺は、それが分からない。
「……っ……突然、出ていってごめん。」
「……うん。」
謝られたからといって、すぐに許せる訳でもないがひとまず相槌をうって話を促す。
「……私ね、今妊娠してるの。」
「えっ?」
咄嗟に彼女のお腹を見る。
膨らみさえないお腹に、一見嘘かと思う。
「まだ、膨らんでくるにはもう少し?かかるみたい。……でも、中絶するなら早い方がいいんだって。」
「え?」
次は、彼女の顔を見た。
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時