退屈な日々に【9K】

何よりも好きなものーymgmー ページ20

それは、ずっとずっと感じていたこと。

付き合う前から、告白する前から、出会った頃から、ずっとーー。


僕の彼女はパズル作家。

数字を使ったものから言葉遊び、ひいては立体パズルまで、日々様々なパズルを作っている。

そんな彼女が作ったパズルはどれも面白くて､毎回解かせてもらえるのが凄く楽しみだった。


……でも。

僕がクイズが大好きなように、彼女はパズルが大好きなのだ。


だから、ずっと感じていた。

いつか、お互いの進む道が完全に別れてしまう日がくる、と。

そしてとうとう、その日がやってきた。


｢……じゃあね、大喜。｣

｢うん、さよなら、Aさん。｣


彼女は今日、家を出ていく。

特別な理由なんて無い。

ただ、お互いに恋愛よりもそれぞれの道を極めることの方が大切で、その為には今の関係は邪魔にしかならないという結論に至ったからだ。

Aさんが出ていって、ドアが静かに閉まった。

瞬間、次から次へと溢れてくる涙。


本当は別れたくなんてなかった。

そりゃクイズも大好きだし、もっともっとクイズをやりたいと思ってる。

でもだからってAさんのこと、大切じゃないわけじゃない。

Aさんとパズルする時も、何をする時も、楽しくて楽しくて仕方なかった。

クイズをするのと同じくらいに。

時には、クイズするよりも。


でも、Aさんはそうじゃなかった。

俺よりもパズルの方が大切だったんだ。

悔しいけど、いつか分かってたことだから。


そう自分に言い聞かせたけど、涙は一向に止まってはくれなかった。

小さな命ーfkrー→←＿＿＿＿

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す